無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第20話

瞼の裏の光
三好 修吾
三好 修吾
夕莉……?
一筋の懐かしい光を感じて目覚めると、視界に広がったのは暗闇だった。
ずきずきと痛む体で起き上がると、薄暗い闇の向こうに鉄格子のようなものが見えた。まるで地下牢のような場所だ。
三好 修吾
三好 修吾
ここは……
チャリ、と鉄のすれる音がして手元を見ると手錠が嵌めてあった。
三好 修吾
三好 修吾
……一体、どういうことなんだ。
夕莉や上嶋は……
俺の最後の記憶は、佐那城の研究施設で夕莉をかばって陽翔に撃たれた所で途絶えている。
三好 修吾
三好 修吾
流石に死を覚悟したけど……食人鬼って思ったより丈夫なんだな
自分の中に流れている食人鬼の血に感謝すべきなのか、複雑な気持ちになった。
遠くからこつこつとこちらに近づいてくるような足音が聞こえ、俺は身構える。
暗い闇の向こうから、ぼうっと火の玉のような光が見えた。ロウソクの火に照らされて、よく知った顔が浮かび上がる。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
やっと、目が覚めたんだ
三好 修吾
三好 修吾
陽翔……!
俺たちを騙し、夕莉を撃とうとした張本人。



鉄格子に飛びついて、俺は奴を睨んだ。陽翔は表情を変えずに淡々と言い放つ。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
君には人質の一人になってもらうよ
三好 修吾
三好 修吾
は? ふざけるな。夕莉は無事なのか!
つい頭が熱くなってしまい、声を荒げる。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
無事だよ。君が大人しくしてくれればね……
三好 修吾
三好 修吾
(くっ……落ち着け、まずは状況を整理しないと)
感情を殺した顔をした陽翔と向き合うと腸が煮えくり返りそうだが、何も分からない今はまず落ち着かなければならない。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
上嶋はすでに明梨が手に入れた。夕莉との交渉材料、いや脅迫かな。君を利用させてもらう。
三好 修吾
三好 修吾
なっ……
三好 修吾
三好 修吾
(上嶋が、既に明梨のものに?)
陸下 陽翔
陸下 陽翔
彼は既に、我らが女王のものだ。君たちにはもう、勝ち目はないんだよ
三好 修吾
三好 修吾
(明梨が女王……!? くっ、血の儀式か)
女王だけが行える、血を交換することによって食人鬼を増やす儀式。
もし、上嶋の血が全て食人鬼の血に侵されてしまえば――上嶋は完全な食人鬼として生まれ変わり、人だった頃の記憶を失うだろう。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
ねえ、君は夕莉のことが好きなんだろう?
三好 修吾
三好 修吾
は、いきなり何を……
自分の心を見抜かれて、不意を突かれたように俺は一瞬動揺した。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
なら君にとっても都合のいい話じゃないか? 恋敵はいなくなるんだし
陸下 陽翔
陸下 陽翔
上嶋が明梨のものになれば、夕莉は諦めざるを得ない……君はそれで夕莉を手に入れればいいじゃないか
ドッ、と全身に力を込めて石畳を踏み抜いた。
抑えようとしていたものがふつふつと湧き上がって溢れ出し、俺は鉄格子に額を擦り付けて陽翔に掴みかかろうとした。
三好 修吾
三好 修吾
ふっ、ざけるな……! 俺はそこまで性根は腐っちゃいないッ! 馬鹿にするのも大概にしろ
ぎりぎりと、歯ぎしりを立てるほど睨みつけても陽翔は無表情の仮面を被ったままだった。
三好 修吾
三好 修吾
そんなことをしたって誰も幸せになれない! 明梨はお前の想い人だろ!?
陽翔の空虚な瞳から目を逸らさずに訴え続ける。
三好 修吾
三好 修吾
誰かを傷つけて、人の心を変えてまで手に入れたものは、本当の幸せなのか?
三好 修吾
三好 修吾
――その幸せは、全部偽物だろ
ガキッ、と鉄格子の一つがひしゃげて折れた。
陽翔が握った鉄格子がカランと、石畳に落ちる。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
……何も知らないくせに、煩いなぁ
低く唸るような声音に変わり、陽翔の逆鱗に触れたのを感じた。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
何も知らないやつに、正論を振りかざされるのは迷惑なんだよ!
陸下 陽翔
陸下 陽翔
間違ってる? それが何なんだ? 幸せには正しさだけが全てなのか?
陸下 陽翔
陸下 陽翔
どうしても、本物の幸せが手に入らないことだってあるんだ
陸下 陽翔
陸下 陽翔
正しくない幸せはこの世にあっちゃいけないって言うのか?
陸下 陽翔
陸下 陽翔
一生、苦しみの中で死ぬのを待たなくちゃいけないのか?
ロウソクの燭台を持つ手が震えて、炎が闇の中で揺らぐ。



静寂だった暗闇は、今は陽翔の怒号が耳をつんざくほど響き渡っている。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
……俺は、明梨に幸せになってもらいたいだけだ。彼女のたった一つの望みを叶えてやりたいだけだ
三好 修吾
三好 修吾
……待て! 陽翔
息を整えながら、陽翔は闇の奥に消えていく。
炎が遠のいていき、やがて足音は上に登っていった。
三好 修吾
三好 修吾
……くそっ。夕莉、上嶋


俺が――絶対に助けてやる。



俺は先程踏み抜いた脆い石畳に目を向け、陽翔が破壊した鉄格子を拾った。
三好 修吾
三好 修吾
囚われのお姫様なんて、まっぴらごめんだ