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第22話

君は楽園から出なくていい
瞼の裏にまで届くようなまばゆい光に刺激されて、目が覚める。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……ん
あまりにも眩しくて手で光を遮った。
やがて、光がゆっくりと像を結び、周りの景色が形成されていく。
一面のひまわり畑。



太陽の恵みを受けた鮮やかな黄色の花弁が風に揺れている。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
ここは……
肌を焼くような熱い日差し、遠くから蝉の合唱が聞こえる。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
どうして俺はここに……確か、俺は……
ぼんやりとした頭で思い出そうとすると、誰かがこちらに駆け寄ってきた。
優夏
お兄ちゃん!
まるでこのひまわり畑をそのまま写し取ったようなワンピースを着た少女――ずっと会いたかった妹がそこにいた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
優夏?
優夏
もう、お兄ちゃんってば足遅いよ。置いていくところだった
麦わら帽子をかぶった優夏は呆れながらも微笑んだ。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
なんで……
優夏
? 今日はみんなでひまわり畑に遊びに来たんでしょ?
ひまわり畑の遠くで、二人の仲睦まじそうな人影がこちらに手を振っていた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……
言われてみれば、そんな気もする。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……う
めまいがして、俺はその場に屈み込んだ。

俺は本当にここにいるのか?

夢から覚めたばかりのような体。現実に馴染めていないような感覚。



夏の暑さのせい?
それとも――
優夏
お兄ちゃん、大丈夫?
ふわりと、頭の上に何か被せられた。
サイズの合わない、小さな麦わら帽子。



見上げると、優花が歯を見せて笑っていた。
優夏
暑いなら、これ貸してあげる。
優夏ははにかみながら、ぽんぽんと俺の頭を叩いた。



なぜか、涙が出そうになった。

目頭が焼き付くように痛い。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
うん、ありがとな
俺は立ち上がって、優花の頭を撫でる。
優夏
もう、子供あつかいしないでよ
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
はは、怒るなよ。
まるであいつみたい――
あいつ――?



頭の中が霞がかったみたいに、名前が思い出せない。



彼女の名前は――









ひまわりを掻き分けて、一人の少女が現れる。
長く豊かな髪を垂らして、俺に声をかけた。
能美川 明梨
能美川 明梨
幸寛
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
ああ……
そうだ彼女の名前は――







上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
ーー明梨
能美川 明梨
能美川 明梨
……ええ、幸寛
彼女は優しく目尻を緩ませてにこりと微笑んだ。

優夏は彼女に勢いよく抱きつく。
優夏
明梨お姉ちゃん! お兄ちゃんに子供あつかいされた!
能美川 明梨
能美川 明梨
あらあら、幸寛ったら。もう優夏ちゃんも立派なレディなのよ?
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
そうか……ご、ごめん
白い肌に、儚さを感じるほど華奢な体。



彼女の美しさは、真夏のひまわり畑ではまるで一輪だけ混じった彼岸花のようだった。
能美川 明梨
能美川 明梨
ほら、行きましょう。幸寛
彼女が俺に向かって手を伸ばす。
日に焼けていない、まだ染まっていないシルクのように白い手。



仲睦まじい父さんと母さん。俺たちを旅行に連れ出してくれた。

大切な妹、何事もなく今日も元気で、心優しい女の子。

そして、俺の恋人の――
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
(ここには、足りないものは何もない)
今までずっと苦しかったような気がする。何度も悪夢を見ていたような――
全部失ってしまう夢。

家族も、優夏も。

たくさん傷ついて、傷つけて、苦しんで、悩んで。

ぐるぐると回り続けて、出口のない迷路から必死に抜け出そうとしていた。



そんな、夢――


















――俺は、微笑む彼女の手を取った
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
(本当に、夢で良かった)
彼女の体温のない手が知っているものと変わらなくて、俺は安堵して手を繋いだ。