瞼の裏にまで届くようなまばゆい光に刺激されて、目が覚める。
あまりにも眩しくて手で光を遮った。
やがて、光がゆっくりと像を結び、周りの景色が形成されていく。
一面のひまわり畑。
太陽の恵みを受けた鮮やかな黄色の花弁が風に揺れている。
肌を焼くような熱い日差し、遠くから蝉の合唱が聞こえる。
ぼんやりとした頭で思い出そうとすると、誰かがこちらに駆け寄ってきた。
まるでこのひまわり畑をそのまま写し取ったようなワンピースを着た少女――ずっと会いたかった妹がそこにいた。
麦わら帽子をかぶった優夏は呆れながらも微笑んだ。
ひまわり畑の遠くで、二人の仲睦まじそうな人影がこちらに手を振っていた。
言われてみれば、そんな気もする。
めまいがして、俺はその場に屈み込んだ。
俺は本当にここにいるのか?
夢から覚めたばかりのような体。現実に馴染めていないような感覚。
夏の暑さのせい?
それとも――
ふわりと、頭の上に何か被せられた。
サイズの合わない、小さな麦わら帽子。
見上げると、優花が歯を見せて笑っていた。
優夏ははにかみながら、ぽんぽんと俺の頭を叩いた。
なぜか、涙が出そうになった。
目頭が焼き付くように痛い。
俺は立ち上がって、優花の頭を撫でる。
あいつ――?
頭の中が霞がかったみたいに、名前が思い出せない。
彼女の名前は――
ひまわりを掻き分けて、一人の少女が現れる。
長く豊かな髪を垂らして、俺に声をかけた。
そうだ彼女の名前は――
彼女は優しく目尻を緩ませてにこりと微笑んだ。
優夏は彼女に勢いよく抱きつく。
白い肌に、儚さを感じるほど華奢な体。
彼女の美しさは、真夏のひまわり畑ではまるで一輪だけ混じった彼岸花のようだった。
彼女が俺に向かって手を伸ばす。
日に焼けていない、まだ染まっていないシルクのように白い手。
仲睦まじい父さんと母さん。俺たちを旅行に連れ出してくれた。
大切な妹、何事もなく今日も元気で、心優しい女の子。
そして、俺の恋人の――
今までずっと苦しかったような気がする。何度も悪夢を見ていたような――
全部失ってしまう夢。
家族も、優夏も。
たくさん傷ついて、傷つけて、苦しんで、悩んで。
ぐるぐると回り続けて、出口のない迷路から必死に抜け出そうとしていた。
そんな、夢――
――俺は、微笑む彼女の手を取った
彼女の体温のない手が知っているものと変わらなくて、俺は安堵して手を繋いだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!