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第11話

祈りと呪い
廃れた協会の中で、私は祈りを捧げるように問いかける。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
どうして……
自分で首を絞めながら、食人鬼として生まれた自分の運命を呪った。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(私が上嶋くんの大切な人を奪ったすべての元凶だったなら)
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(上嶋くんと出会ったことも)
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(私が上嶋くんを好きになったことも)
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(上嶋くんと結ばれたことも――)
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(すべて、間違いになるじゃないか)
ぐっと力を込めて、息ができないほど首を絞める。

懺悔のように、神様を呪うように。



少しだけ夢見た世界。

食人鬼の私と、人間の上嶋くん。

交われない私たちが手をつないでいられる未来。

本当に、ささやかな祈りだったのに。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(もう……いいよね)
硬い骨がきしむ音が聞こえて、頸動脈がドクドクと脈を打つのを指先から感じる。

息苦しさで頭がぼうっとして、瞳から押し出されるように涙が溢れて頬を濡らした。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(こんな世界にいたって、意味ないんだから)
深海に沈んでいくみたいに、苦しくて寒い。
だんだんと目の前の景色がぼやけてきて、瞼の暗闇が下りてくる。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(苦しい……だけど、未来のない絶望に比べたら)
このひと時の息苦しさで溺れて消えてしまいたい。


私は瞼を閉じて、自らの首に爪を立てた。





















九井原 皐月
九井原 皐月
夕莉!!
首を絞めていた腕を無理やり引きはがされて、ひきつった喉に空気が通り抜ける。

死の淵から覚醒して瞼を開くと、皐月ねえが慌てた形相で私の手首をつかんでいた。
九井原 皐月
九井原 皐月
何してるのっ……
九井原 夕莉
九井原 夕莉
皐月、ねえ……
皐月ねえの呼びかけが耳を通り抜けていってしまうほど、私はまだぼんやりとしていた。
九井原 皐月
九井原 皐月
一体何が……
床に落ちているワンピースの切れ端を目にした皐月ねえははっと表情を変えた。
九井原 皐月
九井原 皐月
そんな……まさか
皐月ねえは両肩をつかみ、私の顔を覗きこんできた。蒼白な、色を失った肌の色が月の光で透き通っているよう見える。
九井原 皐月
九井原 皐月
上嶋くんは……
一人で行ってしまったのね……
ぽろぽろと頬を伝う涙が止まってくれない。静かに頷くと、顔からいくつもの涙が滴った。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
……私たち、最初からダメだった。結ばれるなんて、本当にもろい夢だった
九井原 皐月
九井原 皐月
……夕莉
言葉を詰まらせて、皐月ねえは俯く。

どうして、私を止めたの。
もう何もかも意味なんてないのに。
九井原 皐月
九井原 皐月
……ここで、さっきの続きをするのはどうかと思うけど
九井原 皐月
九井原 皐月
……ある意味、これが最後の希望かもしれないから話しておくわ
真剣な顔つきになった皐月ねえは、責任を言葉の一つ一つに込めるように、ゆっくりと語り出した。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
最後の……希望?
私はやっと皐月ねえとまともに目を合わせた。
皐月ねえの瞳の奥は暗く、底の見えない井戸のようで感情が見えない。
九井原 皐月
九井原 皐月
……女王(イヴ)はね、特別な力があるの。それは、優れた身体能力や回復能力だけじゃない
九井原 皐月
九井原 皐月
女王イヴだけが……できることがあるの
九井原 皐月
九井原 皐月
それは……人を食人鬼にすること
九井原 夕莉
九井原 夕莉
……え?
皐月ねえは一度深く息を吸ってから、私から目を逸らさずに言った。
九井原 皐月
九井原 皐月
あなたは……上嶋くんを同じ食人鬼にすることができるわ
九井原 皐月
九井原 皐月
あなたの血を分け与えて、上嶋くんを食人鬼にすれば血の力で記憶を操作できる
九井原 皐月
九井原 皐月
そして、好きな人を手に入れられる
九井原 夕莉
九井原 夕莉
そんな……
私は皐月ねえの話が受け止められず、頭が真っ白になる。

どうして、今そんなことを言うの。
九井原 皐月
九井原 皐月
これが、あなたたちが結ばれる唯一の方法
皐月ねえは感情の光が見えない暗い瞳で、そう言い切った。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
私が……上嶋くんを
彼女の暗い瞳をよく覗き込むと、その奥に赤い光が見える――

―それは、炎のような赤色を灯した自分の瞳だった。