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第13話

朝焼けは血の色をしている
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
ん……
冷たい手のひらに火照った頬を撫でられた気がした。

冷たくて、柔らかい感触。

俺は今、どこにいるんだろう。何をしていたんだろう。

ぼうっとする頭で、重い瞼を開けた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……ゆう、り?
能美川 明梨
能美川 明梨
ようやく目覚めたのね
広がった視界には、薄い微笑みを浮かべている少女が見える。どうやら、彼女が俺の頭を膝にのせて覗き込んでいるようだった。



ハッと、覚醒した俺はすぐに起き上がって彼女から距離を取る。
周りを見渡すと、ろうそくの明りに照らされた部屋は全体的に暗く内装がはっきりとしない。

まるでヨーロッパの古いお屋敷のようで、分厚い絨毯が敷かれており、豪華な装飾が施されたソファに彼女は腰かけていた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
あんた……能美川か。お前も食人鬼なんだろう?
佐那城先生を捕まえたあと、陽翔をスパイとして潜入させ、 ECO の内部を探っていたのは能美川だと聞いている。

佐那城先生は利害が一致したため、陽翔のことを黙認し、協力していたと聞いたが……
能美川 明梨
能美川 明梨
そんなこと。どうでもいいじゃない
能美川 明梨
能美川 明梨
ひどいわ……せっかく私が看病してあげたのに、あいつの名前を呼ぶなんて
穏やかな微笑みの中に、ぞくりと肌が粟立つような悪意が一瞬混じった。
能美川 明梨
能美川 明梨
忘れたの? あいつはあなたの大切な妹を殺したのよ?
どくり、と心臓が大きく鼓動を打って嫌な汗が首筋に滲む。



そうだ、俺は夕莉を、いや夕莉が、俺の妹を。

息が詰まって、過去の光景がフラッシュバックする。

細い首すじを絞める感覚、冷たくて命の温かさを感じないのに、手の中でとくとくと打たれる脈を感じた。

頭に血が上って、俺は自らの手で大切な人の首を絞めたんだ。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
俺は……
でも夕莉が、

俺の妹を、優夏を、




殺したんじゃないか。

だから、



だから俺は。






優夏。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
(でも……)
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
(本当に、夕莉が……)
頭の中でざわざわとした喧騒が聞こえて目眩がした。額に手を当てて、つんざくような頭痛に耐える。

胃の中がひっくり返りそうな不快感、視界がぼやけて能美川と焦点が合わなくなる。
能美川 明梨
能美川 明梨
かわいそう……でも、もう大丈夫
能美川 明梨
能美川 明梨
私はあなたの味方
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたの妹を殺したあいつから、ずっと引き離そうとしていたの
立ち上がった能美川が、ゆっくり近づいてきて俺に手を伸ばす。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
そんなはず……
能美川 明梨
能美川 明梨
違う? 本当にそう言える?
彼女の目が、口が、薄暗い闇の中で三日月のように歪む。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
わか、らない……
体温のない手のひらが、熱くなった俺の頬を包む。

まるで熱病にうなされた時に当てられる氷のように、感覚が鈍くなるような冷たさ。
能美川 明梨
能美川 明梨
私のこと、覚えてない?
飲み込まれそうなほど深い能美川の瞳の奥に、鬼火のような光が見えた。

それはだんだんと大きくなっていき、赤色に燃えていく。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
なんの、ことだ……?
彼女は一瞬、悲しげに目を細めたが怪しい炎のような光は弱まることはなかった。
能美川 明梨
能美川 明梨
……そう、でもいいわ
能美川 明梨
能美川 明梨
今度は、私があなたを救ってあげる
能美川は不気味な光を宿したまま、聖母のように微笑む。倒錯的な彼女の顔に、おぞましさを覚えて体が硬直する。
能美川 明梨
能美川 明梨
私、全部知ってるわ。あなたの可哀想な過去のこと
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
何を……
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたは、望まれて生まれた子供じゃなかった
心の奥に閉じ込めていたものを、無理やり引っ張りだされる。無遠慮に、素手で触れて欲しくない部分を鷲掴みされたような気がした。
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたが生まれたせいで、お父さんは本当に愛した人と結ばれることができなかった
能美川 明梨
能美川 明梨
だから、あなたはずっと邪魔者だった
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……やめろ
声が震える。

耳を押さえても、能美川の声ははっきりとしていて、まるで脳内に直接響いてくるかのようだった。
能美川 明梨
能美川 明梨
優夏だけが……腹違いの妹だけが、あなたに優しくしてくれた
能美川 明梨
能美川 明梨
でもたった一つの希望を、家族を、あなたは失った
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたを愛してくれる人は、この世界に誰もいなくなってしまった
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……やめろ!
声を荒らげると、無理やり顔を引き寄せられて赤色の瞳と目が合う。
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたは、ずっと
ずうっと……一人ぼっち
爛々と光を放ち続ける瞳は、朝焼けのような血の色をしていた。