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第38話

やっと君の瞳に
九井原 夕莉
九井原 夕莉
中身が醜い鬼のあなたと比べたら
私が彼女にそう言い返すと、美しい相貌は眉をひそめ苦虫を噛み潰したような顔になる。
能美川 明梨
能美川 明梨
醜い……? この私が?
能美川 明梨
能美川 明梨
そんなことを言われたのは生まれて初めてだわ
掴んだ腕を簡単に振り払われ、彼女の目が一瞬で緋色に染まる。ナイフを首筋に当てられたような悪寒が走り、私はとっさに距離を取った。
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたにはもっと苦しんでから死んで欲しかったけど……やっぱり止めた
能美川 明梨
能美川 明梨
今すぐ私の前から消えて
距離を取ったはずなのに、一瞬で目と鼻の先で彼女の足先がかすりそうなほど間合いを詰められた。

喉が息を飲むのと同時に上体を反らして回避するが、今度は蹴りが横腹に容赦なく入った。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
うっ……えっ……!
屋根の上から転げ落ちそうになり、爪で屋根の表面を引っ掻きながら何とか踏みとどまる。体の内側が全てひっくり返ってしまったような激痛に、ゲホゲホと咳き込んだ。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(痛い……なんてレベルじゃない。体の中がぐちゃぐちゃになって……潰れたみたいな……)
吐きそうになるのを耐えて、震える足で立ち上がろうとする。しかし、足は地を滑り上体を起こすことも叶わない。
能美川 明梨
能美川 明梨
あら……残念。まずはその気に入らない顔から潰してあげようと思ったのに
能美川 明梨
能美川 明梨
でもおかしいわね……今の蹴りも内蔵をミンチにして骨を砕いて胴を真っ二つにするはずだったのに
能美川 明梨
能美川 明梨
どうして、死んでないのかしら?
バクバクと心臓が今までにないほど速い鼓動になっていて、本能が警鐘を鳴らしていた。

彼女に――殺されると。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
やめろ!
上嶋くんが明梨に銃を向ける。

しかし、すぐに明梨は上嶋くんの隣に移動し、いとも簡単に彼の手から銃を弾いた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
なっ……
そして明梨は無防備になった彼の胸を人差し指でトンと叩く。
能美川 明梨
能美川 明梨
『そこで、大人しく見てて』
母親が子供に言い聞かせるような優しい声音で明梨がそう言うと、上嶋くんの動きがピタリと止まる。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
なん……で?
能美川 明梨
能美川 明梨
あなたの中に私の血が流れているからよ。もうすぐ、あなたは私のものになる
彼女は悠々と散歩にでも出かけるような軽やかな足取りで、私に近づいてくる。
三好 修悟
三好 修悟
くそっ、夕莉!! 陽翔! いい加減離せ!!
陸下 陽翔
陸下 陽翔
…………
いまだに私は体勢すら立て直せず、立ち上がることすら出来ていなかった。
力を振り絞って上体を起こすと、目の前まで来た彼女を見上げる形になる。
彼女の瞳は夜の闇の中で怪しい輝きを放ち、鮮やかな血の色をしていた。
能美川 明梨
能美川 明梨
もっと早くこうすれば良かった……
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
夕莉ーっ!!
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(あ……私)
彼女の長い爪が月の光に透き通る。研ぎ澄ましたナイフのような鋭利な爪先が私に向けられて、心臓を指差した。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(……殺されるんだ)
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(嫌……死にたくない)
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
やめろ……やめろおおおおおおお!!
能美川 明梨
能美川 明梨
さようなら、夕莉
九井原 夕莉
九井原 夕莉
(上嶋くんっ……!)
真っ直ぐとその爪が深く胸に突き刺さって、心臓を貫く――











――はずだった。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
え……?
ぼたぼたと、彼女の目と同じ色の赤が流れる――
能美川 明梨
能美川 明梨
…………どうして
緋色の瞳が大きく見開かれて、彼の姿がそこに映った。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
……こうでもしないと、君の目には映れないかなって
明梨が刺したのは、私の前に立ち塞がった陽翔くんだった――。
陸下 陽翔
陸下 陽翔
明梨……お願いだから
陸下 陽翔
陸下 陽翔
もう……止めよう?