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第2話

私達の恋は死につながれている
九井原 夕莉
九井原 夕莉
だから、私は私を殺さなきゃ
私は自分の頭に銃を突きつける。

普段感じることのない鉄の感触。

命を奪う残酷な無機質さを思い知らされて、肌の表面がぴりぴりした。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……夕莉ッ!
上嶋くんが叫び声を上げて手を伸ばす。

だけど、その手が届く前に私は震える人差し指を動かした。






死。






上嶋くんを庇って自分に銃弾が向かってきたあの時の、全てが消えてしまう前の恐怖が再び襲ってくる。



二度と味わいたくない、おぞましい感覚。
私はその恐怖を飲み込んで――硬い引き金を引いた。



































































頭の中で反響するように、キーンと、高い金属音が断続的に鳴っていた。

風が木々を揺らして葉の擦れ合う音が耳鳴りに混じって聞こえてくる。




死ぬ時って、遠くの静寂を聞くような心地がする。




銃の重さに任せ、腕が脱力して体は痙攣した。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
…………あ



喉が引きつって出たような、音にならない声。



引き金を引いた銃からは――弾丸は出なかった。



目の前には焦った表情で、生気の抜けたような上嶋くんが立ち尽くしていた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……な、んで、こんなこと
理解の追いつかないのだろう。上嶋くんは力が抜けたように膝をついた。

信じられない、と目を白黒させて私に焦点を合わせる。



小刻みに鼓動を続けて生きていることを主張する胸を押さえ、私は熱くなった吐息をゆっくり吐いた。

耳奥には死を撃ちこむ金属音がまだ残っていた。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
私……上嶋くんと一緒にいるために、覚悟をしなくちゃいけないと思ったの
九井原 夕莉
九井原 夕莉
一回、私は死なないといけない
九井原 夕莉
九井原 夕莉
今ので私、やっと”死ねた”
私はリボルバー式の銃から銃弾を取り出す。

私のやったことはいわゆるロシアンルーレットだ。銃弾を一つだけ入れて、シリンダーを回し引き金を引く。

今回は当たらなかったが、もちろん引き金を引いた時に銃弾が入っていたら本当に死んでいた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
どうして、そんな危険なことを……
自らの命を秤にかけた私よりも死にそうに見えるほど蒼白な顔を向けて、上嶋くんは私に尋ねた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
本当にっ……死ぬかもしれなかったんだぞ……!?
九井原 夕莉
九井原 夕莉
上嶋くん、この銃は私なの
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
……え?
九井原 夕莉
九井原 夕莉
弾丸が一つ入った銃、どんな時に命を奪われるか分からない凶器……
それは上嶋くんにとっての私でしょう?
やっと上嶋くんは私の言葉を少し理解したようで、はっと真顔になった。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
私は、ずっとそれが嫌だった。上嶋くんだけが、私のせいで命の危機にさらされるのが……
私は上嶋くんの目線に合わせるために跪き、彼の手に銃を握らせる。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
君のそばにいれば居るほど、不安で、怖くて……でも、そんな自分が嫌だった
九井原 夕莉
九井原 夕莉
だから私は弱い自分を殺して、君と対等になりたかったの
上嶋くんに銃を持たせて、私はその腕を自分に向けさせた。

彼は驚いて、夕日の光を奥底に落とした深海のような瞳を揺らす。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
上嶋くんも私をいつでも殺すことができないと、フェアじゃないでしょ?
彼の銃を握った手を、愛おしむように私は胸に抱いた。
九井原 夕莉
九井原 夕莉
私の覚悟は、いつでも君に殺されてもいいということ
上嶋くんが私を抱きしめてくれたことと、同じくらいのことを私もしなきゃいけなかったから。
私は上嶋くんに精一杯の愛を込めて微笑む。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
夕莉……お前は、本当に
上嶋くんは一瞬泣きそうに目尻を下げて、すぐに私を抱きしめた。
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
殺さないよ
九井原 夕莉
九井原 夕莉
うん
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
殺されない
九井原 夕莉
九井原 夕莉
うん
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
見つけるんだ、俺たちで
上嶋 幸寛
上嶋 幸寛
どんなに辛くても、俺はお前を離してなんかやらない
九井原 夕莉
九井原 夕莉
……うん
私も彼を抱きしめると、馴染んだ体温を感じて安心した。



この熱は君がここにいる証。

私の心臓が動いている証。



夜と昼が交じり合う黄昏みたいに、
交じり合えない私達もこの時だけは溶けて一つになったような気がした。