うちはこの声ですぐに分かった。
男「あ?なんだお前。」
後ろから抱きしめられながら言われてるから
今、優くんがどんな顔してるのかは分からない
けど、明らかに声が低い。
こんな声聞いたことない…
男「汚い手だぁ?なんだこのデブが笑」
うちはその発言を聞いた途端
掴まれていた腕を思いっきり振り解いた。
うちが言いかけた時
今度は優しい声がした。
優くんがうちの両肩をもちながら
男から背を向けて歩き出そうとすると
男「はっ!なんだよ。
誰がそんな地味女を本気でナンパするかよww」
え…?
今の声は…ほんとに優くんの声なの…?
男「何度でも言ってやるよ!ww
誰がそんな、地味な芋女を本気でナ…ブッ」
うちは一瞬なにが起きたのか分からなかった。
いつのまにか、優くんはうちから離れていて
目の前の男を殴っていた。
優くんはそう言って倒れた男の上に
馬乗りになって何度も何度も殴り始めた。
もううちの声も届いていない。
そうしてるうちに、周りの歩いてる人からの
視線が。
うちは走って優くんに後ろから抱きついて
止めに入った。
すると、我に返ったのか
優くんの動きがピタッと止まった。
男「ゴホ、ゴホ…くそ!覚えとけよ!」
そう言って、男は急いで逃げていった。
息切れをする、うちと優くん。
周り人も徐々にうちらから離れて
2人だけになっていた。
うちは力が抜けたかのように、優くんから離れて
座り込んだ。
優くんがうちの方を振り向いた。
ビクッ
優くんがうちの頬っぺたに触ろうとしたけど
うちつい、初めて優くんを拒否してしまった。
うちの目から涙が溢れていた。
優くんも少し涙目になり
手を引っ込めた。
優くんは立ち上がりうちを見下ろしながら
それだけ言うとうちに背を向けて去って行った。
まだ頭の中がごちゃごちゃしてて
うちはしばらくその場から動けなかった。
やっぱり、あーいうかっこいい人は
あーいう事を何の悪びれもなく
平気な顔して言うんだ。
だから、みんなが言う「イケメン」は嫌い。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!