第242話

「 後悔 」
5,527
2023/02/03 10:08

side:月島





北「 それ、あなたのことやろ?」













確か名前は … 忘れた、



その人はそう僕たちに問いかけながら



向かいのベンチに腰を下ろして



ぐんぐん牛乳のストローをさした。



昼に牛乳か …… いや別にいいけど、














『 … はい 』




北「 ふっふ、ほうか 」




『 … え?』













てっきり怒られるのかと思っていた僕は



笑ってそう返す主将に間抜けな声を出してしまった



隣に座っている山口もアホみたいな顔をしている













北「 俺は稲荷崎高校のバレー部主将の北信介や。自分、俺の名前知らんやろ?」




月島「 え、… はい 」




北「 苗字はちゃうけど、俺とあなたはいとこやねん
やから、あなたの身に起こったことは大体知っとる 」




月島「 … 」




北「 あなたはな、普段は明るからさ振る舞っとるから分からんけど … ああみえて過去は辛いことばっかやったねん 」




山口「 … 辛いこと、?」




北「 天才は発掘された時から将来へのレールは引かれてるって思われがちやろうけどそうやないねん、
あなたの場合は、同じバレーをしてる年上からしたらバレー始めてまだひよっ子が世間の注目を集めて、天才と呼ばれて、レギュラー奪われて、全然おもろくなかったんやと思う。」















北さん、は下を向いて



何故か悔しそうにその後の言葉を話す














北「 年齢が低いからと言う理由で虐められて、有る事無い事噂を広められ、… すごく苦しんだんや 」




山口「!?、イジメ … 」




北「 多分自分が想像してるいじめとは少しちゃうと思う、
あなたは練習の時にペアを組んでくれなかったり本来のポジションではないところでやらされて使い物にならないと言われたり、… まあそんなような感じや 」















僕はその人の言葉に対して何も言えずに



ただ下を向いて唇を噛んでいた。













北「 まだ小学6年生の女の子にはそのいじめは耐え難いものだったんや、
そして2年後、あなたは表舞台から姿を消した。

彼女の天才は、全て努力できてたんや 」




『 … 』




北「 だから、あなたを一言で天才で片付けることだけはやめてあげてくれんか?」














彼女は天才ではなかった



バレーの魅力に取り憑かれ、努力した結果



世間では “ 天才 ” などと呼ばれるようになった。



それ故に夢を諦めた女の子



そんな彼女に僕はあの日なんて言った??



彼女はどんな顔をしていた??




























『 ごめん、本当にごめんなさい。
僕が君みたいな天才だったらなんて、君のことさ全然知らないのに、全部知ったような口聞いて、傷つけて、… 本当にごめんなさい 』
















きっとこんなに謝ったのは今日が初めてで最後だ



頭を下げる、



彼女の顔は気まずくて見れなかった














NEXT ⇒

プリ小説オーディオドラマ