side:月島
僕の小さな声はどうやら彼女には届いたようで
近づいてきてどういうこと?と僕の顔を覗き込む。
どうやらなんのことだか理解できていないらしい
『 一昨日の、… 酷いこと言ったから、』
雛垣「 おととい、?…… あ、あぁ … 」
なんのことか思い出したのか
途端に気まずそうに目線を逸らす
雛垣「 あれ、全然気にしてないよ 」
『 でも、』
雛垣「 本当に気にしてないから!私も、月島くんのこと全然知らないのに知ったような口聞いちゃってごめんね、」
嘘つき。
傷ついてないならそんな悲しそうな顔しないよ、
とボソリと心の中で呟く。
『 じゃあなんで、そんな傷ついてような顔するの 』
雛垣「 っ、…!」
『 … 聞いたんだ、君のこと。過去のことを、』
、
あれは、合宿2日目の昼ごろ
スポドリ以外にドリンクが飲みたかった僕は
財布を持って自動販売機まで行った
後ろには山口がいつものようについていて
120円のぐんぐんヨーグルトを購入した
東京は何かと物価が高い、
山口「 ツッキーはヨーグルトか … じゃあ俺はバナナにしようかな!」
『 別にシェアなんてしないんだから好きなの飲めばいんじゃないの?』
山口「 んー、そろそろツッキーからも自立したいからさ!」
『 … は?なにそれ 』
なんて話しながら近くのベンチに腰掛け
ぐんぐんヨーグルトにストローをさして飲んでいると
山口があ!と声を上げた
山口「 そいえば明日、あなたさんがマネやってくれるんだってー!」
『 … へぇ 』
山口「 うれしいなぁ、久々じゃない??あなたさんってたくさん褒めてくれるからすきなんだよね 」
『 ふーん、案外ちょろいんだね山口 』
山口「 チョロ、っ!??」
チョロい、その一言になぜか慌てふためく山口。
別にいじってもなければ揶揄ってもいないんだけど。
ていうか、昨日彼女と一事あった僕からすれば
マネージャーは正直気まずいだけなんだけど ( )
山口「 でもあなたさんって本当羨ましいよねぇ、」
『 なんで?』
山口「 だって元天才少女だよ!?いいなぁ、俺も一度でいいからそう言われてみたかった、、」
『 … 確かに才能がある人間はいいよね、チヤホヤされて。僕にも才能が欲しかったよ、苦笑 』
天才は楽だ。
対して努力をしなくても才能だけでチヤホヤされて
人生が楽だと思った。
それ以外は特に考えもしなかった
ただ僕の願望と嫉妬、から生まれたその言葉は
目の前に立った影によって飲み込まれた
「 それはちゃうな 」
顔を上げれば関西の高校、確か稲荷崎高校と言ったか
そこの主将が立って僕を見下ろしていた
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。