第2話

# 私のお気に入り
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2019/01/11 11:20
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
あなたちゃんちょっとおいで。


店内には美味しそうな紅茶の香りとと甘い匂いが漂う。
私は、スノードームの中のキラキラを舞わせ、音楽が鳴ったことを確認して
水樹さんの元へ駆け寄った。
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
今、新作お菓子作ったんだ。
よかったら紅茶と一緒に食べていって。
銉野
銉野
いいんですか?!
ありがとうございます!!


私は甘いものに目がない。
お腹がいっぱいでもお菓子は別腹だ。
銉野
銉野
わ〜綺麗✨

水樹さんがくれたお菓子は、
小さなお城の形のケーキに白い粉がかかっている。

水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
ありがとう。
店の名前にちなんで作ったんだ。
銉野
銉野
(店の名前って確か…英語みたいな…)
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
店の外に書いたんだけど…読めた?
銉野
銉野
いえ…あれって何語なんですか?
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
あれはね、フランス語だよ。
Poudreuse・chateauと書いて、プドルーズ・シャトーって読むんだよ。
和訳すると、粉雪の城。


粉雪の城…か
銉野
銉野
綺麗ですね。
スノードーム店にぴったりです✨
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
そうだね。
でも、この名前をつけたのはまた違う理由もあるんだよ。
銉野
銉野
違う理由…?
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
うん。
まぁ、いずれわかるよ。


そう言って水樹さんは、紅茶を用意してくれた。

銉野
銉野
いただきます。


一口サイズ…ならぬ三口サイズほどに切り分けてもらったケーキを頬張る。
銉野
銉野
お…美味しい✨
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
ほんと?よかった☺︎
山田涼介
山田涼介
お、美味そうなもん食ってるな…
でも、俺はいつもので
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
はいよ笑笑


いつものって言えるほど常連さんなんだなぁ…

ここに来たら、山田涼介に会えるんだ…✨


なんか、すごい事を知ってしまった気持ちで少し後ろめたくなる。

それより…オススメってなんなんだろう…





ーーーーーーー数分後ーーーーーーー
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
はい、どうぞ。

そう言って水樹さんが持ってきたケーキは
とても美味しそうだった。
銉野
銉野
わぁ…可愛い💕
山田涼介
山田涼介
だろ?

そう言って得意げに笑う山田さんの前に可愛いケーキが置かれた。
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
今日だけ特別にタダな。
山田涼介
山田涼介
太っ腹だねぇ〜
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
一応感謝の意味を込めて。
山田涼介
山田涼介
一応って言うな。笑笑
でも、まぁどーも。ありがたく頂戴しますよ。


そう言って食べる山田さんの顔が綺麗でしばらくボーッと見ていたら…
山田涼介
山田涼介
((パチッ
銉野
銉野
(あ…やば…目合っちゃった…)
慌ててさっと視線を落とすと、
向かいに座る山田さんはふっと笑った。
山田涼介
山田涼介
なぁ…顔そらすなよ。
こっちむけって((グイッ
銉野
銉野
?!
…ん?!


いきなりの顎クイであたふたしている私の口元に、山田さんの食べているケーキが
持っていかれ口に入れられた。

山田涼介
山田涼介
どうだ?
銉野
銉野
お…美味しいです…///


やばい…今絶対顔赤い…

ほてる顔を必死に抑えていたら、水樹さんが首をすくめた。
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
会った初日からラブラブしないの!
寂しいでしょ!俺が!!!
銉野
銉野
(ら…ラブラブとか…そんな///)

少し恥ずかしがっていたが山田さんはいたって冷静だった。
山田涼介
山田涼介
大丈夫だって。
だってあなた高校生だろ?
立派な大人が女子高生を口説くとかしねーから。



そんな言葉は、私の胸をちくりと刺した。

そらそーだよね。
向こうは大人。こっちはまだ子供だもん。
山田涼介
山田涼介
でも、お前は気に入った。
これ俺のLINEのID。絶対追加しとけよ。
じゃーな。


そう言って、私に小さな紙を渡して帰っていった。
水樹   蒼唯
水樹 蒼唯
…あなたちゃん本気で気に入られたみたいだよ。
あの女嫌いな山田がこんなことするなんて…
またいつでもおいでね。またケーキ食べさせてあげるよ。
銉野
銉野
あ…ありがとうございます!


そう言って私は店を後にした。













帰り際、ポケットに入れた山田さんにもらった小さな紙に触れた。
こんな所で会えるなんて思わなかった…。
有名人に。







銉野
銉野
(カッコよかったなぁ…)

いつもテレビでは見せていないような一面も観れた気がして
自然と笑顔になる。








そして、私は家路へと急いだ。
また、あの場所で会える事を夢見て。

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