第13話

十三話
32
2022/01/29 15:08
野並誠
…はぁ…もう入院してから四週間も経つのか。
もう一ヶ月ほど過ぎたが、やはり長いな、退院までの道のりは。
津野旋毛
津野旋毛
そんなこと言わずに、気長に待とうよ。
野並誠
…お前だけが頼りだ、ツル。
津野旋毛
津野旋毛
えー?急に何ですか。
野並誠
ツルしか話し相手がいない。
津野旋毛
津野旋毛
まあ、私はナマさんとしか話せないし。
野並誠
…ああ、そういえば、人慣れしてないんだったな、お前。
津野旋毛
津野旋毛
うん、まあね。
小さく呟くツル。
顔は俯いていた。
野並誠
元気ないのか?
津野旋毛
津野旋毛
…いや、私って駄目だなーって。
野並誠
え?なんでだ。
津野旋毛
津野旋毛
人が苦手だからって学校にも行かずに引きこもってばっかでさ。
津野旋毛
津野旋毛
従姉妹だって多分人が苦手なのに…学校に行けてる。
津野旋毛
津野旋毛
…それでなんか、ナマさんにも色々迷惑かけるし…。
野並誠
俺は体を起こし、座っていたツルの頭を撫でた。
津野旋毛
津野旋毛
ひゃっ!?
野並誠
…何言ってんだよ、ツル。
野並誠
俺にとってお前が迷惑なわけないだろ。
津野旋毛
津野旋毛
…だって…。
野並誠
なんだ?
すると顔をさらに暗くし、ツルは言った。
津野旋毛
津野旋毛
…私が従姉妹の話をしたから、ナマさんは学校に行って…それで…。
津野旋毛
津野旋毛
そのあと、車に轢かれた。
津野旋毛
津野旋毛
…だから私のせいなんだよ…ね。
少しだけ声が震えているのに気がついた。
俺が轢かれたのは決してツルのせいじゃない。
…俺の不注意と運転手が悪い。
…ツルには責任なんて感じて欲しくなかったから俺は言った。
野並誠
確かにそうだ。
津野旋毛
津野旋毛
…っ。
野並誠
でも違う。
野並誠
確かにツルのために俺は学校に行った。
津野旋毛
津野旋毛
…だよね。
野並誠
でも俺はお前に笑ってほしいから、学校にいったんだよ。
すると困惑したような顔をするツル。

そりゃそうだ、笑ってほしいなんて言われても困るだけだ。
野並誠
お前が頭を抱えて悩んでる姿は俺は見たくない。
野並誠
ツルにはいつでも笑っててほしい。
笑えと言われたって困るのはわかっている。
それでもやっぱり自分のことを心配してくれる人が苦しむ姿だけは見たくないんだ。
だから。
野並誠
…だから悩みがあるなら俺に相談してほしい。
津野旋毛
津野旋毛
っ…ナマさん…
野並誠
…ツルは俺のことを心配するように俺はツルを心配するし。
野並誠
…困った時は助けたい。
野並誠
…だからちょっとぐらいは頼って欲しいんだ。
野並誠
…もちろん押し付けがましいのは分かってる。
…押し付けがましくても良い、俺は大切な人に笑っていてほしい。
津野旋毛
津野旋毛
ツルは天井を見上げて言う。
津野旋毛
津野旋毛
ナマさん…なら言える…かな。
野並誠
…!
津野旋毛
津野旋毛
んへへ、大したことじゃないんだ、私の悩みなんて。
津野旋毛
津野旋毛
…でもナマさんがそこまで言ってくれるもんだから…言うしかないよ。
苦笑いを浮かべながらそう言うツル。
津野旋毛
津野旋毛
…端的に言っちゃえば…。
そうして彼女はずっと隠していたその真実を言う。
津野旋毛
津野旋毛
…私、犯罪者の娘なんだ。

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