いつも世話になっている商店街の中で、一人悶々と悩んでいる
少年が立っていた
美しい形の眉毛を限界までしかめ、何かを考え込んでいる
ようだ
あっけらかんとそう言い放つツウィに、魚屋は大袈裟に
ため息をついて目頭を押さえた
申し訳なさそうにしているツウィに痺れを切らした魚屋が
一喝すると、ようやくツウィは顔を上げておずおずと礼を
言う
両手が塞がるほど大きな冷却ボックスを軽々と持ち上げて
そのまま商店街を進んでいると、先程からやけに多くの
子供達とすれ違うことに気が付いた
親子連れもいれば子供だけの時もあり、その誰もが駄菓子屋
から出ている
ほとんどがジョンヨンと同じくらいの年齢なのだろう
楽しそうに歩いている
そうツウィが聞くと、女の子は満面の笑みでたくさんの
お菓子が詰められたカバンを見せてくれた
気を失ったようにぼーっと虚空を見つめていたツウィを
女の子と母親が心配そうに覗き込んでいる
それに気が付いたツウィはすぐにいつもの天使スマイルに
戻った
ぽんぽんと頭を優しく撫でると、女の子は少し恥ずかしそうに
はにかんだ
それを見て母親も安心したようすだ
ばいばいと手を振って去っていく親子が見えなくなると、
ツウィはすっと笑顔を消す
しばらくその場に固まって動かなかったツウィはぶんぶんと
何かを振り払うように首を振り、走って家まで向かった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。