第58話

第57話
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2022/04/20 15:21
ツウィ
ツウィ
うーん…
いつも世話になっている商店街の中で、一人悶々と悩んでいる

少年が立っていた


美しい形の眉毛を限界までしかめ、何かを考え込んでいる

ようだ
商店街の人
商店街の人
よおツウィ!
そんなに悩んでどうした、せっかくの男前が台無しだぞ~
ツウィ
ツウィ
あ、こんにちは、おじさん!
商店街の人
商店街の人
おっ、お目が高いなぁ!
そりゃあついさっき入荷したばっかの鮭だぜ
焼くもよし、煮るのもよし、炒めるもよしだ!
ツウィ
ツウィ
魅力的だ…!
じゃあ5匹ください!
商店街の人
商店街の人
…お前んとこって6人家族だろう?
一人分足りねぇんじゃねえのか?
ツウィ
ツウィ
僕の分は無しでいいですよ
昨日たくさんお弁当貰えたので
あっけらかんとそう言い放つツウィに、魚屋は大袈裟に

ため息をついて目頭を押さえた
商店街の人
商店街の人
ったく…若いモンがそんなこと気にしてんじゃねぇよ!
一匹まけてやっから持ってけ!
ツウィ
ツウィ
えっ…そんな、悪いですよ…!
商店街の人
商店街の人
いいんだよ!
ツウィ
ツウィ
……
商店街の人
商店街の人
いいか?お前が体調崩して倒れでもしたら、アイツらは心配もするだろうが金の頼りが無くなんだろ!
そっちの方がチビどもに迷惑かけんだろうが
申し訳なさそうにしているツウィに痺れを切らした魚屋が

一喝すると、ようやくツウィは顔を上げておずおずと礼を

言う
ツウィ
ツウィ
…ありがとうございます!
商店街の人
商店街の人
おうっ、お前には笑顔が一番似合うんだからよ
そうやってニコニコしとけ!
ツウィだったら、絶対誰かが助けてくれる!
ツウィ
ツウィ
はいっ!
両手が塞がるほど大きな冷却ボックスを軽々と持ち上げて

そのまま商店街を進んでいると、先程からやけに多くの

子供達とすれ違うことに気が付いた


親子連れもいれば子供だけの時もあり、その誰もが駄菓子屋

から出ている


ほとんどがジョンヨンと同じくらいの年齢なのだろう


楽しそうに歩いている
友達
友達
あっ、ジョンヨン君のお兄ちゃんだ!
ツウィ
ツウィ
?…あ、ジョンヨンのクラスメイトの子だよね?
子供の母親
子供の母親
あら本当!こんにちは~!
ツウィ
ツウィ
こんにちは
いつもジョンヨンがお世話になっております
…今日は何かイベントでもあるんですか?
先程からたくさんお子さんと親御さんを見るので…
そうツウィが聞くと、女の子は満面の笑みでたくさんの

お菓子が詰められたカバンを見せてくれた

友達
友達
今日は、修学旅行のおやつを買いにきたんだよ!
ツウィ
ツウィ
修学、旅行…?
商店街の人
商店街の人
あら、まだジョンヨン君からお知らせ聞いてない?
この夏休みで6年生は修学旅行に行くんですって
ツウィ
ツウィ
え…ジョンヨン、そんなこと一言も…


















???
いいのよ…気にせず楽しんできて…?




???
ツウィ君!急いで家に帰って!!





???
…僕のせいだ


















友達
友達
…い……じょ……ぶ?大丈夫お兄ちゃん!?
気を失ったようにぼーっと虚空を見つめていたツウィを

女の子と母親が心配そうに覗き込んでいる


それに気が付いたツウィはすぐにいつもの天使スマイルに

戻った
ツウィ
ツウィ
…あ、いや…何でもないよ、ごめんね?
教えてくれて、ありがとう
ぽんぽんと頭を優しく撫でると、女の子は少し恥ずかしそうに

はにかんだ


それを見て母親も安心したようすだ
商店街の人
商店街の人
この子ったらジョンヨン君と一緒に行くって言って聞かなくて…
友達
友達
お母さんったら、それ言わないでよ~!
ツウィ
ツウィ
ありがとね、あの子も喜ぶと思う
これからもジョンヨンと仲良くしてあげてね?
友達
友達
うんっ!
ばいばいと手を振って去っていく親子が見えなくなると、

ツウィはすっと笑顔を消す
ツウィ
ツウィ
…何で、今思い出すんだ…
しばらくその場に固まって動かなかったツウィはぶんぶんと

何かを振り払うように首を振り、走って家まで向かった

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