第56話

第55話
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2022/04/13 12:05
目を覚ますと、朝の6時


しまった、ベッドではなく秘密基地で寝落ちしてしまった


慌てて絵画を取り外して、息の詰まる広い広い鳥籠に元通りだ
ミナ
ミナ
…あ
シワ一つない、きっとお手伝いの人が洗濯をしてくれたので

あろう制服のシャツに手を伸ばしたところで、ようやく

思い出した
ミナ
ミナ
…今日から夏休みだ…
本当に、憂鬱


バレエも家庭教師などの習い事も全部家だし、この家に

四六時中ずっといなければいけないのが苦痛で仕方ない


…しかも、ツウィ君と勝手に気まずくなっちゃったし
ミナ
ミナ
……はぁ…
テラスに入ると皮肉にも朝日が煌めいていて



こんなに憂鬱な夏休みになるんだったら、何か部活に入って

おくんだった


何部がいいかな…弓道部とかコンピューター部とか

ゲーム研究会とかあったら真っ先に入ってたかも


…お父様に部活動は禁止されてたから、どのみち駄目だったか
ミナの父親
部活などという遊びに今しかない貴重な時間を割くな
勉強や習い事に取り組みなさい
そうしたら、今後ミナ自身のためになるからな
そこにいつも私の意志なんてなくて


私だってやりたいこともたくさんあるし、もっと堂々と

ゲームだってしたい


この家に生まれたから仕方ないって、分かってるけど


だけど、もっと皆と同じように…
メイド
お嬢様!どちらにご用ですか?
あ、見付かっちゃった


こんなに朝早くだし…言い訳どうしようかな
ミナ
ミナ
少し気分転換に外に出たくて…
メイド
でしたら運転手の手配を…!
ミナ
ミナ
いえ、大丈夫です
少し歩きたい気分なので
メイド
さ、さようでございますか…
かしこまりました、旦那様には私からお伝えしておきます
何時頃に帰宅されますか?
ミナ
ミナ
軽く一時間で戻ってきます
朝食はその後でお願いします
メイド
かしこまりました
それでは、くれぐれもお気を付けて…
ようやく解放された私は一目散に外に出て警備員の人にも

同じように事情を伝え、門を開けてもらった


まだ朝早いのにもう既に人はたくさんいて、私と同じくらいの

高校生も多く見かける


…ん?あの黒いパーカー、まさか…
ミナ
ミナ
ツウィ、君…!?
ツウィ
ツウィ
?…あっ、ミナ先輩!
しまった、そう思ったが時は既に遅し


満面のキラースマイルでこっちに近付いてくる、黒い帽子と

大きな段ボールを抱えている彼
ミナ
ミナ
は、早いね…アルバイト?
ツウィ
ツウィ
はい、配達のアルバイトです
夏休みは稼ぎ時なので!
…ミナ先輩も早いですね?
ミナ
ミナ
あ、う、うん…ちょっと、ね…
ど、どうしよう…


こっちが勝手に意識しちゃって、気まずい…


私らしくないな
ツウィ
ツウィ
ミナ先輩とお話しできて嬉しいです
最近中々お会いできてなかったので
ミナ
ミナ
そ、そうかな…忙しかったから
それすらも美しいツウィ君から流れる汗を見て、思わず

タオルを渡してしまった


何やってるの、私…!
ツウィ
ツウィ
わっ、すいません
ありがとうございます!
ミナ
ミナ
ううん、大変そうだね…
夏なのにそのパーカー、暑くない?
何の気なしに話題に出したパーカーで、さっとツウィ君の

顔が曇ってしまった


私、何かいけないこと言っちゃったかな…?
ツウィ
ツウィ
…やっぱりおかしいですよね、こんな暑い日にパーカーなんて
本当に、どうかしてるよな…
ミナ
ミナ
い、いや、そのパーカー、すごくツウィ君に似合ってると思うよ…!
でも熱中症とかなってほしくないから…
私何言ってるの…


絶対変なヤツだって思われた


でもツウィ君に似合ってるというのは本当


熱中症になってほしくないというのも…本当


正直に伝えると、ツウィ君はすぐいつもの笑顔に戻った
ツウィ
ツウィ
へへ…心配かけてごめんなさい
でも大丈夫ですよ、僕体は強いので!
ミナ
ミナ
…そっか
体調には気を付けてね?
ツウィ
ツウィ
はい!…あ、僕そろそろ行きますね
また学校で!
ミナ
ミナ
うん、また…
あっという間に走って見えなくなったツウィ君の背中を

思い出して、またため息をつく


…今日、良いチャンスだったのにな


早起きは三文の得、なんて大嘘
ミナ
ミナ
はぁ……ん?
何だか最近視線を感じるような気がする


勘違いだとは思うけど…


もうそろそろ帰ろ、良いことなんて無かった



でも、何でだろう


さっきから心臓がうるさいんだ

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