目を覚ますと、朝の6時
しまった、ベッドではなく秘密基地で寝落ちしてしまった
慌てて絵画を取り外して、息の詰まる広い広い鳥籠に元通りだ
シワ一つない、きっとお手伝いの人が洗濯をしてくれたので
あろう制服のシャツに手を伸ばしたところで、ようやく
思い出した
本当に、憂鬱
バレエも家庭教師などの習い事も全部家だし、この家に
四六時中ずっといなければいけないのが苦痛で仕方ない
…しかも、ツウィ君と勝手に気まずくなっちゃったし
テラスに入ると皮肉にも朝日が煌めいていて
こんなに憂鬱な夏休みになるんだったら、何か部活に入って
おくんだった
何部がいいかな…弓道部とかコンピューター部とか
ゲーム研究会とかあったら真っ先に入ってたかも
…お父様に部活動は禁止されてたから、どのみち駄目だったか
そこにいつも私の意志なんてなくて
私だってやりたいこともたくさんあるし、もっと堂々と
ゲームだってしたい
この家に生まれたから仕方ないって、分かってるけど
だけど、もっと皆と同じように…
あ、見付かっちゃった
こんなに朝早くだし…言い訳どうしようかな
ようやく解放された私は一目散に外に出て警備員の人にも
同じように事情を伝え、門を開けてもらった
まだ朝早いのにもう既に人はたくさんいて、私と同じくらいの
高校生も多く見かける
…ん?あの黒いパーカー、まさか…
しまった、そう思ったが時は既に遅し
満面のキラースマイルでこっちに近付いてくる、黒い帽子と
大きな段ボールを抱えている彼
ど、どうしよう…
こっちが勝手に意識しちゃって、気まずい…
私らしくないな
それすらも美しいツウィ君から流れる汗を見て、思わず
タオルを渡してしまった
何やってるの、私…!
何の気なしに話題に出したパーカーで、さっとツウィ君の
顔が曇ってしまった
私、何かいけないこと言っちゃったかな…?
私何言ってるの…
絶対変なヤツだって思われた
でもツウィ君に似合ってるというのは本当
熱中症になってほしくないというのも…本当
正直に伝えると、ツウィ君はすぐいつもの笑顔に戻った
あっという間に走って見えなくなったツウィ君の背中を
思い出して、またため息をつく
…今日、良いチャンスだったのにな
早起きは三文の得、なんて大嘘
何だか最近視線を感じるような気がする
勘違いだとは思うけど…
もうそろそろ帰ろ、良いことなんて無かった
でも、何でだろう
さっきから心臓がうるさいんだ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。