『大吾くん…』
高橋「…誰?」
少し睨むように大吾くんを見る恭平
私は恭平から離れて大吾くんにピタッとくっついた。
『私大吾くんと帰るから…』
高橋「は…?」
西畑「ちょ、あなたちゃん!」
何か言いたそうな恭平を無視して大吾くんの手を引っ張る。
苦しくて、胸が締め付けられてつい逃げてしまった。
西畑「大丈夫…?」
『あ…ごめんなさい…気にしないでください』
西畑「泣いてる女の子1人で帰せへんよ。話聞こか?家どこ?って家はあかんか」
『聞いてくれるんですか…?』
西畑「俺でいいなら」
大吾くんはうちに着くまで何も聞かずにいてくれた。
部屋の前に来ると何か少し躊躇っている大吾くん
西畑「ほんまに入っていいん?」
『大丈夫です…どうぞ。あ、ここ座ってください』
西畑「お邪魔します…で、なんで泣いてるん」
『…失恋ですかね。ずっと好きだったのに彼女できちゃって。告白もできませんでした…かっこ悪いですよね、笑』
あ、やば。口に出すと余計泣きそう
そう思った瞬間、腕を引かれてふわっと優しい香りに包まれた。
西畑「無理に笑わんくてええんやで?俺が受け止めたる」
『……っ、』
友達と呼んでいいのかも分からない男の人に抱きしめられて、たくさん泣いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!