今は3月の終わり頃。
私は晴と椎名兄弟の家に来ていた。
私なんかが有名になれるのだろうか。
どうしても思考がネガティブな方へ行ってしまう。
樹さんが黙ってうなずく。
でも、その通りだ。
ウジウジしてたって始まらない。
起こすんだ、行動を...!!
3月も終わり、4月になった。
今日も椎名兄弟の家に来ている。
そう。私達は一昨日、歌ってみた動画を撮ったのである。
それまで黙っていた樹さんが口を開いた。
樹さんがいつもより嬉しそうな顔でうなずく。
こうして、私達、「UDUKI」は、スターへの一歩を踏み出したのであるーーーーーーーーーーーーーー
とりあえず、歌ってみた動画をYouTube、ニコ動、Twitterにあげることにした。
日に日に少しずつだけど、フォロワーさんが増えていく。
コメント欄には、「声綺麗」とか、「ユユちゃんとコウキくんのハモりが凄い」とか...褒め言葉が沢山来ていて純粋に嬉しかった。
少しだけだけど、颯に近づけた。
そう思うと気分がよくなる。
フォロワーさんが1000人を越えると、晴も綺麗な顔で笑ってくれた。
歌を歌う度に皆が笑顔になる。
こんな素敵なことが他にあるだろうか。
でも、物事、そんな順調には進まない。
9月下旬。
SNS上で、ある写真が話題になっていた。
それは、夏休み、私と颯が二人で歩いていた写真だった。
勿論それは炎上し、顔出しをしていた私のところに誹謗中傷するようなコメントが沢山来ていた。
勿論それは颯のところにも来ていて、ニュースにもなった。
颯が兄ということは言っていなかった。
別に言う必要はないと思っていたから。
でも、この際言った方がいいのかもしれない。
私のせいで、「UDUKI」が批判されるのは嫌だ。
「今、炎上している写真ですが、私、ユユと颯は恋愛のような関係では決してありません。血の繋がった兄妹です。今まで黙っていたこと、本当に申し訳なく思います。」
そう書いてSNSにアップした。
また、颯の方も、私が妹であることを公表した。
それで一応、場は収まった。
そう言って颯は私の頭をワシャワシャと撫でた。
この時、私はまだ、「UDUKI」に降りかかるさらなる困難に気づいていなかったのであるー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。