私は、輝きたかった。
みんなを照らすような存在になりたかった。
だから私は、今、自分を越える。
高校受験も終わって、とりあえず一段落ついた3月。
一日中退屈で、テレビを見ては寝て、を繰り返していた。
私は7のボタンを押す。
私の兄、時雨 颯は、今人気急上昇中の国民的アイドルだ。
友達も少なく、スクールカースト底辺の私とは違い、颯は沢山の人々に愛されて、輝いている。
颯は私の憧れだった。
でも、私が颯のようになれるわけがない。
そうやって自分で勝手に決めつけていた。
颯がハキハキと質問に答えていく。
...笑顔、か。
私も誰かを笑顔にさせてみたいな。
そんなことを思っていると、電話がなった。
清瀬 晴。一つ年上の私の幼馴染みで、私の好きな人。
そんな晴が、一体私になんのようだろう。
少し浮かれてる自分に腹が立つ。
心臓がヤバい。
なんでそんな期待させるような言葉を言うの。
晴が好きなのは「声」なのに。勝手に浮かれるな、私。
そんな、晴に言われたらさ、なるって言うしかないじゃん。
...それに、もしかしたら、歌い手になれば私も颯みたいに輝けるかもしれない。
通話終了ー
本当に晴はずるい。
改めてそう感じた。
翌日ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ピンポーン
私は晴の家のインターホンを鳴らす。
少しして晴が出てきた。
晴の家に上がったのは一体何年ぶりだろう。
リビングに行くと私より年上と思われる男子二人がいた。
私は軽く会釈する。
晴に言われて顔が少し火照るのを感じた。
私は深くお辞儀する。
すごい親しみやすい人で良かったぁ~
でも、樹さんはさっきから全然喋らない。
すると、ようやく口を開いた。
あ○みょんさんのマリー○ールドのサビを歌う。
樹さんが固まって動かない。
樹さんがこくんとうなずく。
すると晴が私の髪をワシャワシャと撫でた。
晴の笑顔。
ホント好きだ。
晴は昔から私が歌を歌うと、綺麗な笑顔を見せてくれる。
だから私は、歌い続けていた。
もし、私が有名な歌い手になれたら、もっともっと沢山、綺麗な笑顔を見せてくれるだろうか。
ここから、私達の物語が始まるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。