ー樹sideー
この前、結々の兄であり、国民的アイドルでもある颯さんに、
「恋愛に興味を持てばもっといい曲がかける」
と言われた。
正直言って、俺は初恋もまだだった。
そもそも、人と接するのが苦手だったから、恋愛を気にしている余裕がなかったのかもしれないけど。
いつも曲をかくときは、弟の皇紀の恋バナや、親友の晴の恋バナを聞いてかいていた。
だから、俺の気持ちは全く入っていなかった。
その分中身が薄っぺらかった。
もっと心に刺さる歌がかきたいのに。
そう言いながら結々が俺にホットココアを渡してくれる。
結々が俺の隣に座る。
これを年下の女の子に話して良いものかと、一瞬躊躇したが、俺だけで解決することは難しい。
身近な女子...結々しかいないんだけど...。
意識か。
意識...ってどうやってするんだ?←
今はわからないけど、わかるようになるのかな。
そう言って結々がニコッと笑った。
ー結々sideー
12月に入った。
色々あったけど、ここまで乗り越えることができた。
皇紀くんがハイテンションで私と樹さんと晴を集める。
樹さんがうなずく。
どっちも楽しそう!!
そういうことで、私達はクリパやなんやらの準備を始めた。
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私はクリパの道具を取りに物置部屋に行く。
段ボールが沢山つまれている中から、クリスマスの物が入ったものを見つけた。
するとそこに樹さんが来た。
私は他の物につまずいて体が樹さんの方に傾く。
ドサッ
...チュッ
「チュッ」...?
私が樹さんを押し倒したような体制になっていて、何より私の唇と樹さんの唇が触れていた。
私は慌てて樹さんから離れる。
お互い顔が真っ赤だ。
樹さんも初キスだったのかな。まぁ、恋したことないって言ってたし。
その日はまともに樹さんと目を合わせられなかった。
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―樹sideー
ヤバい、どうしよう。
事故だとしても、結々と接吻をしてしまった...。
ただでさえ意識してんのに...///
結々とまともに目を合わせられない。
いつまでたっても心臓の音が鳴り止まなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。