第17話

“ さて、俺は誰でしょう?”
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2020/04/03 00:07
茉白 サツキ
へ?
ふわっと後ろから隠された目元にびっくりして、また間抜けな声が飛び出た。

『カタンッ』

手に持っていた携帯がホームの床に滑り落ち、コンクリートとぶつかった音をたてる。
さて、俺は誰でしょう?
茉白 サツキ
…はぁぁ………ハギ。
吉田 ハギ
せいかーい!
真っ暗だった視界が急にパッと明るくなって、思わず目を細める。


(携帯、携帯…)


落ちた携帯を探そうと下を見下ろすと、既に彼が持っていた。
吉田 ハギ
はい。
変な声出てたよ、サツキ。
茉白 サツキ
それはどうも。
誰かさんが原因なのは明確ですけどね。
吉田 ハギ
いやいや、好きな女の子が自分とのトーク画面開いてニヤニヤしてたら男はみんなやるでしょ?

(ま、またそんな事言って…)
茉白 サツキ
はいはい。
で、いつから居たの?
吉田 ハギ
30分前くらいから?
茉白 サツキ
え?…って事は、待って、私が来た時から居たってこと?!
吉田 ハギ
うん。
茉白 サツキ
なんで声掛けないの?!
吉田 ハギ
いや、俺の為に待ってるのかぁ…と思うと、何となく?
茉白 サツキ
『何となく』?!
吉田 ハギ
後、トーク画面開いてニヤニヤしてた。
茉白 サツキ
流石に訂正。
トーク画面は開いてたけど、『ニヤニヤ』はしてない。
彼から携帯を受け取ると、私は早速本題へと移ろうと切り出した。
茉白 サツキ
で、今日はどうしたの? 
見せたいものって何?
吉田 ハギ
まぁ、そんなに急かさないでよ、茉白サン。
俺だって寂しいんだからさ。

(『寂しい』…何が?)
茉白 サツキ
吉田 ハギ
はい、はぐれそうだから手繋いで。
彼が手を差し出す姿はもう何度も見た。

そして、いつも分かるのは “ 女の子慣れ ” しているということ。
茉白 サツキ
手を繋ぐ事にどんなに抵抗があったとしても、残念ながら私の場合は繋いだ方が良いのは経験済みだ。

“ 場所が場所だから ”、という圧倒的な理由のせいで。


私の手を優しく握ると、今度は私の崩れた前髪に触れた。

私の前髪をさっと直した後、彼は春の空気に紛れてふわっと笑う。
吉田 ハギ
可愛いね、サツキ。
茉白 サツキ
茄子紺色をベースに白い小花が散らされる生地。

フレアスリーブに結ばれたリボン、
普段は選ばないVネック。

腰より少し高い位置できゅっと閉められたワンピース。

足元には少しだけレースアップされたキャメルのヒールパンプスを履いていた。
吉田 ハギ
好きだよ。
茉白 サツキ

(それは格好の事だよね? 前に言ってた、『好きなら『好き』って言う』ってやつ?)


ここ数日間で学んだが、深く考えると彼の思うツボな気がするので、

簡単な言葉で、且つ言われて嬉しい言葉で済ませる答えに行き着いた。
茉白 サツキ
…ありがとう。








駅から出た私達は繁華街の大通りへと出る。


“ 場所が場所だから ”。

流石に部屋着で行くわけにもいかないし、
迷いやすい私は誰かに引っ付いておかないといけない。

特に友達と来た際、人混みを歩く時は腕を組ませて貰っている。

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