第13話

“ だから、言ったじゃん。”
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2020/04/01 22:26
ねぇ…
『ガシッ、グンッ』

私の肩を掴むと、無理やり振り向かされる。
やっぱり可愛いなぁ…お名前はなんて言うのぉ?
知らない40代ぐらいの男の人。
楽しそうに笑って、スルリと私の頬に触れた。
茉白 サツキ
ぃっ…
言葉にならない叫びが口から漏れる。
彼氏は?居ない?居ないよねぇ?
嬉しいなぁ、今から一緒に遊ぼうねぇ。
目は若干虚ろで、私の頬に触れた次は指の隙間に指を入り込ませ、
恋人繋ぎだねぇ。
なんて言って、私の顔の前にかざした。
茉白 サツキ
ぁっ、…
声が出ない。
恐怖で口がガチガチと細かく震える。


(た、助けて…だ、誰か、助け、て…)



振り解けない手の握力はどんどん強くなっていく。

あの時、生徒会室で彼に握られた手の感覚とは全く違う。


悪意に満ちた目が、手が、笑顔が…私を動けなくするのは容易だった。



『ドサッ』

腕に力が入らなくなって、肩からトートバッグがずり落ちた。

そんな事はお構い無しに、男の手が私が後ろで纏めた髪に触れ始める。
茉白 サツキ
っ、っっ、、…、、
あれぇ、どうしたのぉ?
おじさん、怖いかなぁ??
茉白 サツキ
っ…、、っ、、
大丈夫、優しくするからねぇ。
男の手がTシャツの襟元からゆっくりと入れ進められる。


(た、すけ、て)



こんな時だというのに、

何故か脳裏に彼の声を思い出して────






茉白 サツキ
っ、、ぎ、
んんぅ?
茉白 サツキ
ハギっ、、!!
『ハギ』ぃ?誰なのかな、それはぁ?
これから楽しいコトしようってのに、他の男の名前を呼ぶなんて酷いなぁ?
茉白 サツキ
ハギっ…、、ハギっ、っ、
私は彼の名前を口にする事しか出来なくて。

男の手は依然として私の服の中へと向かう途中だ。
茉白 サツキ
ハギっ!
私が目を閉じて、精一杯に藻掻いた時だった。
だぁかぁら、 ぁ…誰なのかなぁ、ハギって────
俺だよ。
『バキッ』

鈍い音が耳に飛び込んで、目の前の空気が横へと動いた。

ズザザッと地面が大きく擦れる音がした。




私が呼んでいた彼の声が聞こえた気がして、恐る恐る閉じていた瞼を上げた。


私よりもずっと高い背丈、大きな背中。

私の顔を見るなり、彼は困ったように笑う。
吉田 ハギ
だから言ったじゃん。
サツキは女の子なんだから、って。
茉白 サツキ
は、ぎ……
痛ぇっ…
手首を掴まれて引き寄せられた私は、目の前の光景に驚く。

さっきまで私の前に居た男が、頬を抑えながら這い蹲っている。
お前ぇ…
ギロリと睨む男を無視して、私のトートバッグを拾い上げると、

即座に彼は私の手首を引いたまま走り出した。
吉田 ハギ
こういうのは逃げるのが最善!








彼に連れられるまま、かなり遠い公園まで走ってきた。

私の手を優しく握ったまま自動販売機の前に来ると、「水、水。」と小銭を入れてボタンを押した。


『ガシャンッ』

周りに結露が付いたペットボトルを取り出し口から手に取る。
吉田 ハギ
ついて来てないみたいで良かったぁ…
追いつかれてたら流石の俺でも逃げ切るのは無理。
茉白 サツキ
彼は私をベンチ座らせると、さっきの水のペットボトルを私に差し出した。
吉田 ハギ
はい。
茉白 サツキ

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