第31話

“ 俺の安らぎに ”
154
2020/04/05 06:00
吉田 ハギ
茉白 サツキ
でも、私は看護師じゃないから的確にどうしたら良いかとか分からないし、この家の人でもないからいつでも助けられる訳でもない。
吉田 ハギ
…うん。
茉白 サツキ
それでも、ハギが少しでも辛い時に早く和らげる為に私に出来る事があるなら、何でもする。
吉田 ハギ
『何でも』?
茉白 サツキ
何でも。
『スッ…』

彼の腕がゆっくりと私を包む。

彼の顔は私の肩に埋められたままで、どんな表情をしているのかは全く見えなかった。

『ギュッ』
吉田 ハギ
『何でも』なんて女の子が言っちゃいけないんだよ…
茉白 サツキ
吉田 ハギ
あれだけどーのこーのって言ってた癖に、結局男の家に入って来ちゃってるし。
茉白 サツキ
それはハギが善意で招いてくれたからであって…
吉田 ハギ
男の『善意』って何?
そんなんじゃ何されても文句言えないよ?
茉白 サツキ
っ…
吉田 ハギ
大体、『何でもする』なんて言っちゃって…
もし俺が「サツキを抱かせて欲しい」なんて言ったらどうするの?
茉白 サツキ
ちょっと怖いけど、…頑張る。
吉田 ハギ
はぁ??(ピキッ)
茉白 サツキ
吉田 ハギ
そう?分かった。
じゃ、お願いしようか
茉白 サツキ
女子とはよくしてるし、今もしてるし。
吉田 ハギ
…………は?
彼はパッと顔を上げると、おでこを合わせて私の目を見つめる。
吉田 ハギ
……サツキ、意味、分かってる?
茉白 サツキ
ハグの事じゃないの?
吉田 ハギ
茉白 サツキ
吉田 ハギ
あー、そっかーー…あああ…そっちかぁーーーー…
彼は笑いながら、もう一度私の肩へと顔を埋めた。

彼の吐息が私のブラウスの上からでも分かる。



重ねられた手から感じる温度、

私の肌の上で流れる吐息、

彼の髪が私の首を擽る感覚等、


今彼から感じる全てが愛しく思えてしまった。



(…大事に、したい……今度は、私が守り、たい………)

吉田 ハギ
茉白 サツキ
吉田 ハギ
今日の俺の事、誰にも言わないで。
約束、してくれる?
茉白 サツキ
…うん。
彼は顔を一度上げて、それから目を閉じて私に身体を預けた。




『ユサッ…』


こてんと肩に乗せられた頭の重みが、

何故か私の胸を騒ぎ立てる。
吉田 ハギ
俺が辛そうな時は隣に居てくれるだけでいーよ、サツキは。
茉白 サツキ
吉田 ハギ
ただ隣に居て、俺の安らぎになって。
それだけで十分だから…


皆が知ってる、
人気者の彼の顔。

それは私も知ってる、
彼の顔。







でも、この弱々しい彼の姿は



きっと私だけが知ってる彼の顔────




茉白 サツキ
傍に…居る、から………

プリ小説オーディオドラマ