第3話

“ ねぇ、”
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2020/03/31 17:35
首を傾げ、困ったように笑みを浮かべながら私の顔を見る彼。
茉白 サツキ
(あぁ…信じられない……)
先生
吉田くん、茉白さんとは…
吉田 ハギ
同じクラスです、今年が初めてだけど。
彼の何が苦手かと言うと、

私とは別次元のパリピ人間である事だ。



格好から分かるように、どの学年からの生徒からの人気者だ。

おまけに容姿は端麗で、周りにはいつもやんちゃ系の男子とキャピキャピ系の女の子が居る。



3年という長い高校生活。

最後の最後にして、 “ 吉田 ハギ ” と同じクラスになってしまった。
茉白 サツキ
…吉田くんがどうかしたんですか?
先生
どうって…吉田くんに手伝って貰うのよ、茉白さんの仕事を。

(はぁっ?!)


先生が何を口にしたのか、全く意味が分からなかった。
茉白 サツキ
えっと…本気ですか?
先生
本気本気。
吉田くんね、凄く字も綺麗だし、資料とかもパワーポイントとかも作るの上手だから…茉白さんの助けになるんじゃないかなぁ、って思ったんだけど。
茉白 サツキ
は、はい…?
先生
どう?

(『どう?』なんて言われても…)


気づけば彼は部屋中を歩き回り、ガラス戸の棚を覗き込んでは資料ファイルのタイトルを見ていた。
茉白 サツキ
先生
ね、そっちの方が生徒会の仕事も捗るでしょ?

(『捗るでしょ?』って…色々と任せるのは先生なんですけど。)


私は彼にこちらの話が聞こえないように、小声で先生に話をする。
茉白 サツキ
手伝って貰える事に異論はありません。
ただ、“ 彼 ” に問題があるんです。
先生
問題?どんな?
茉白 サツキ
………こ、校則違反、とか。
中身に問題がある、なんて言えない。

もっと詳しく言えば、私との相性に問題がある、という話だが。
先生
ああ、確かにねぇ…生徒会の者としての自覚、とかは周りから言われるだろうし。
茉白 サツキ
はい。
先生
うーん、でもねぇ…
茉白 サツキ
先生
別に壇上に立つ訳じゃないし、会議に参加して貰うつもりでもないし。
正式なメンバーになるでもないから良いかなぁ、って。

(待て待て待て待て、嘘でしょ?)


この学校は校則はあるが、他の学校と比べてまぁまぁ緩い。

少しぐらいの制服の着崩しは特に何も言わないし、
パリピ人間に関しては機嫌を損ねない限り、幸いにも授業の邪魔をしない人間が多い。


つまり、先生が、学校自体が校則破りを黙認している。
茉白 サツキ
でも、
吉田 ハギ
ねぇ、
後ろから声が掛かって振り返る。

入口近くから延びる、縦に長い大きな机の奥の誕生日席に腰掛ける彼。
吉田 ハギ
それって俺がピアスもやめて、髪色も戻したら許してやるよ、ってこと?
茉白 サツキ
!!!

(思いっきり聞こえてるじゃん!!!)

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