首を傾げ、困ったように笑みを浮かべながら私の顔を見る彼。
(あぁ…信じられない……)
彼の何が苦手かと言うと、
私とは別次元のパリピ人間である事だ。
格好から分かるように、どの学年からの生徒からの人気者だ。
おまけに容姿は端麗で、周りにはいつもやんちゃ系の男子とキャピキャピ系の女の子が居る。
3年という長い高校生活。
最後の最後にして、 “ 吉田 ハギ ” と同じクラスになってしまった。
(はぁっ?!)
先生が何を口にしたのか、全く意味が分からなかった。
(『どう?』なんて言われても…)
気づけば彼は部屋中を歩き回り、ガラス戸の棚を覗き込んでは資料ファイルのタイトルを見ていた。
(『捗るでしょ?』って…色々と任せるのは先生なんですけど。)
私は彼にこちらの話が聞こえないように、小声で先生に話をする。
中身に問題がある、なんて言えない。
もっと詳しく言えば、私との相性に問題がある、という話だが。
(待て待て待て待て、嘘でしょ?)
この学校は校則はあるが、他の学校と比べてまぁまぁ緩い。
少しぐらいの制服の着崩しは特に何も言わないし、
パリピ人間に関しては機嫌を損ねない限り、幸いにも授業の邪魔をしない人間が多い。
つまり、先生が、学校自体が校則破りを黙認している。
後ろから声が掛かって振り返る。
入口近くから延びる、縦に長い大きな机の奥の誕生日席に腰掛ける彼。
(思いっきり聞こえてるじゃん!!!)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。