第21話

“『優秀な茉白サン』?”
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2020/04/03 23:33

☆*☆*☆*☆*☆*☆*☆*☆*☆





桜は既に散り、夏に向けて若葉が生い茂る頃になってきた。

入学式と新入生オリエンテーションは共に大成功に終わり、生徒会メンバーや顧問から大袈裟なぐらいに褒められた。

ハギはそれ以降も私を手伝ってくれて、早くも2ヶ月以上経つ。
茉白 サツキ
はぁ…

(やばい、全然進まない。集中力無さすぎる…)


理由は簡単。

圧倒的睡眠不足によるものだ。



定期考査の1週間前になると、

私みたいな『やらなければ絶対に成果が出ない人』は勉強しなければいけない。


その為、生徒会の仕事や部活の創作活動が滞り、
定期考査明けに溜まりに溜まった仕事をダッシュで消化する必要がある。



ここ数日間の睡眠時間は…平均2時間。



巷で聞く、『ショートスリーパー』と呼ばれる短時間睡眠の彼らに(彼らなりに辛いところが有るのだろうが)なりたい、とどれだけ思った事だろうか。
茉白 サツキ
んんん…


時間が全く足りない。


(寝たい…)


目を閉じて伸びをすると、つい寝てしまいそうになる。

うとうとしかけたところで、「はっ」と重い瞼を大きく開けた。
吉田 ハギ
茉白 サツキ
…な、何?

(ハギが居るの忘れてた…危ない危ない。)


今日も生徒会室には私と彼だけ。


昼ご飯を食べた後だったので余計に眠い。

それに実は今は昼休み時間内で、学校で唯一休める『休み時間』も返上して仕事をしている状態だ。
吉田 ハギ
別に?
彼はいつの間にかノートパソコンの画面から目を離し、私を見ていた。


(うっ…変な…微妙な罪悪感…『全然仕事してないな、こいつ。』とか思われてるのかな、私…)
茉白 サツキ
…ハギ、今は何の作業してるの?
吉田 ハギ
んー?
3日分先のお仕事。

(うわぁ…そんな所まで行ってるのか……)


彼は黙々とキーボードを打ち続け、私より早いスピードで仕事を終わらしていく。

その集中力と何でもそつなくこなせるセンスがシンプルに羨ましい。
吉田 ハギ
茉白 サツキ
…さっきからじっと見てどうしたの?
吉田 ハギ
いーや? 
なんか日に日に集中力落ちてるなー、って。
茉白 サツキ
ごめんなさいね、『優秀な茉白サン』がこんな感じで。
吉田 ハギ
いえいえ、いつもお疲れ様です。
『優秀な茉白サン』?
私は自分を心の内で鼓舞して仕事に望むが…どうやら今日は駄目らしい。


(でも、今日の分はやっておかないと後に響くし。)


キーボードの手が止まり、私の脳内は迷走しだす。


(それにハギは既に今日の分のお手伝いは終わってるわけで…どう考えても遅くなる私に付き合わせるのはなぁ……)


『〜♪♪、〜〜♪、♪♪、〜♪』
茉白 サツキ
あぁ…
予鈴が流れ始めるのを聞いて、私は即座に決断せざるを得なかった。
茉白 サツキ
ハギ、
吉田 ハギ
何?
茉白 サツキ
今日は先に帰ってて。
私、これ終わらせなくちゃならないから。

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