…勇気出してドアを開けようと思っても…手が動かない。
…トントン。
誰かに肩を叩かれ…振り返ると、翔が立っていた。
笑顔で挨拶してくれた。
翔に背中を押されて…ドアを開き…教室に1歩踏み出す。
葵と、八神は、もう先に来ていた。
顔をあげられないー。
どこかで…向こうから手離すんじゃないか?って恐れている私がまだ居た。
1歩…1歩…前へ進んで私の席についた。
隣に八神がいたので…挨拶してみることにした。
罪の告白をして…八神は、全てを知っている状態…。
復讐したかった相手が私だって言うことも分かっていても…
私に挨拶してくれますかー?
という声が飛んで来て、正直驚いた。
と、葵も私の机にやって来た。
でも、まだ私は下を向いていた。まだ顔が見れない。
そう不安そうな声で言うと…
と、答えてきた。普通…《人殺し》の私に話しかけてこないでしょ?
友達…?
顔を上げると…そこは微笑んでいる葵が立っていた。
嬉しかった……??
翔も、八神の前の席に座り…そう言った。
でも、八神にとっては……違うんだろう。
意外な言葉が聞こえたので、八神の方を見ると…八神は、スマホしながら口を開いた。
そう言うと、八神を目を開いてこっちを見た。
微笑みながら…
…あぁ、また目が熱くなる。
今度こそ…本当にホッとした。
八神達は、私をちゃんと受け入れてくれる。
ちゃんと向かい合ってくれている…。
《人殺し》の言葉…私も嫌いだけど…
いつの間にか自分で言うようになっていたんだなぁ…。
八神は、スマホを机に置いて私を睨んだ。
八神には気づいていたのか…。
本当は、告白した後…死のうとした。
過去から逃げたくて…目の前にあることから逃げたくて…。
思えば…私って逃げてばっかりだね。
八神って…なんでも分かっちゃうだね。
人間観察して来たからなのかなぁ?
ふんっ!と、最後はドヤ顔をしながら言うものだから…私は、笑い出した。
あーあ、また涙が出てくる…。
うん、泣くのも今日で《終わり》にしよう。
これからも、また過去のことなどで辛いことがあるかもしれないけど…頑張って踏ん張ろう。
やっぱり…この3人が大好きだ。
私を救ってくれて…受け入れてくれた大切な人達だ。
じゃあ、私もそろそろ勇気を出して…ちゃんと言ってみようか。
そう言うと…3人は照れながら微笑んだ。
私は、涙を拭って…ちゃんと顔を上げて…
笑顔でずっと言いたかったことを口にする。
今度こそ…ちゃんとした本当の友達に…。
過去と関わって結びあった…ドロドロした友達じゃなくて…。
3人は、目を合わせて…微笑みながら私に言った。
『 喜んで!! 』
お わ り 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。