《学校》 (葵side)
昼休みは、いつも通りに騒々しい…。
楽しそうな声が弾んでいる。
翔は、『そうかも…。』と言い、青ざめた。
それを見て八神は、吹き出した。
昨日の夜…話をしてからもっと仲良くなった気がするのは私だけかな?
2人のやり取りを私は、微笑んでみていた。
ちこちゃんも、帰ってきたらまた盛り上がりそう…。
そう思って微笑んでいたのは…後になって後悔するのだった。
八神の机の周りに、葵と、翔は、腰を下ろした。
ちこ……??
葵と翔は、固まった。
目を合わせ……翔は、小さい声で言った。
(八神の心の声)
どういう事だ?
だったら…吉田 ちこが犯人だって言うのか?
……え?…はっ?
同じ事を思ったのか、翔は苦笑いをする。
そうだ、そうあっさりと…犯人が分かるものなの…?
次の瞬間、静かになった。
え?吉田 ちこ が、11年前の事件の犯人?
八神は、だんだん怖い顔になっていく…。
翔も、何も信じられないという顔になった。
違うと…私も信じたい。
あのちこちゃんだよ?優しくて…人を殺そうな人にはとっても見えない…あの人だよ?
私は、ずっと ちこちゃん のそばにいた。
絶対にあんなことをする人じゃない。
私は、否定した。
でも、八神は冷たい目で私を睨んで言った。
八神は、初めて…転校してきた時のあの暗い顔に戻った。
最近、ちこと話して…自然な顔になってきたのに…。
全てが…今までの全てが壊れたのように感じた。
八神は、ハッと笑う。
そんなの…上手く組み合わせただけだよ…。
吉田 ちこ が犯人だって言う証拠はない!!
八神は、何も言い返せず…下を俯く。
そうなんでしょ?信じて…1番最初に話したんでしょう?
バッグについてるうさぎのキーホルダーが目に映る。
前…ちこ が、誕生日にプレゼントしてくれた…。
私にとっては初めての友達からのプレゼントだった。
私は、ずっといじめられていた。
それを止めて…私の手を握ってここまで引っ張ってくれたのは…ちこ。
今とは逆で…暗かった私に話しかけてくれて…。
『友達になろう!』って言ってくれて…。
今、ここに居るのも ちこ のおかげ。
だから、今度は私が…助けたい。
もし、ちこ が…犯人だとしても…なんか意味がある。
あんな優しい人だから、意味なく人を殺すようなことは絶対にしない。
いつか、いつか……自分から全てを話してくれると信じてる。
だから、今はちょっとだけ待っていて欲しい。
そう言うと、2人はハッとし…少し考え込む。
しばらくすると、八神が口を開いた。
良かった。…とりあえず ちこ が帰ってきてすぐに《大喧嘩》とかならないで済む…。
ほっとしていると…八神は、ため息をつき こう言った。
とりあえず…明日からも、今まで通りに振る舞うことにした。
少しずつ…少しずつ…4人の輪が壊れて行く音がした。
そして、誰かが遠く行ってしまいそうな気がした。
私は、4人と話し合って…今度こそちゃんとした友達になりたい。
そんなの綺麗事だって…言われるのかな?
うざく思われるのかな?
そうでも…私は、そう思ってるー。
《他の3人はどう思っているのだろうー?》
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。