第72話

俺が守る 周side
175
2021/09/08 22:16

萌花「周くん周くん!」


周「ん?」


放課後になり、今日も白雪が俺の教室に来た。


白雪は優達のほうにはあまり行かなくて、いつも俺の近くに来る。


何でなのかな。


萌花「私ね、周くんのん?って聞く顔大好き!」


白雪は笑って言った。


周「ありがと」


お礼を言うと、白雪は面白くない顔になる。


俺変なこと言ったかな。


萌花「本気で言ってんのに!周くんって鈍感?」


周「鈍感?違うよ」


俺は笑って言うと白雪はほっぺを膨らませた。


白雪が男子にモテる理由は凄くわかる。


表情豊かで、自分を可愛く見せるのが上手。


甘えるのも、弱さを見せるのも上手。


優とは真反対だな。


優は可愛いのに自覚なくて、甘えるのも、弱さを見せるのも下手くそ。


雨の日、優が俺の家に来てからは、少しずつ話せている。


話すって言っても、「おはよう」とか「ばいばい」とかだけど。


元に戻りたいな。


優「周」


優の声がしてすぐ顔を上げると、優が気まずそうに俺を見ていた。


周「なに?」


久しぶりに名前を呼ばれた。


萌花「優ちゃん!!どーしたの?」


白雪も俺と一緒に優を見ている。


優「萌花ちゃん、周と二人で話したい」


萌花「え?なんでなんで?約束したよね?」


約束?


約束ってなんだ。


話についていけない俺は2人の顔を交互に見る。


優「やっぱり無理。私嫌われたくない。」


萌花「は?」


やばい空気。


周「優、屋上行こ」


俺は優の手を握る。


優は驚いた顔。


萌花「待って!周くん!」


周「ごめん、白雪。また明日な」


俺は優しく笑いかける。


白雪は涙目になる。


優「周、」


俺は無言で優の手を握ったまま教室から出た。




__屋上__


優「...」


屋上について、優の手を離すと顔が赤くなっていた。


また熱だろうか。


周「優?大丈夫?」


下を向く優の肩に触れると、ビクッとして優は俺の肩を殴った。


優「さわるな!」


周「は!?なんだよいきなり!」


優「ふふ」


優は怒ったかと思うと、笑って俺を見た。


周「どうしたの?」


優「あのさ、」


優がスカートをぎゅっと掴んでいる。


周「うん」


優「ごめんなさい」


優は俺の目を見て言った。


周「え、」


優「萌花ちゃんと付き合えとか、酷いこと沢山言って、幻滅させた」


優は涙をこらえるように話す。


優「私が嫌われるのは当たり前だよ。でもまた友達になりたいです」


優は真剣な顔で話す。


優「わがままだよね、ごめん」


優は悲しそうに笑って俺から目をそらした。


周「俺は優を嫌いにならないよ」


優は顔を上げて、目を開いた。


周「確かに結構傷ついたけどさ、俺もずっと友達に戻りたいって思ってた。」


周「優と話したいなって思ってた。」


俺が笑うと、優は涙を流した。


綺麗に泣く優が愛おしくて、つい抱きしめてしまった。


優「ごめんなさい、」


優は泣きながら言う。


俺は優を強く抱きしめて笑った。


周「謝んないでよ」


優「ありがとう、周」


優は少し震えている。


優は細くて、力も弱くて、ちゃんと女の子だ。


前に男みたいだからって笑ってたけど、俺の中ではずっと女の子だよ。


可愛くて、みんなに優しすぎて、強くて、でも弱くて、いつも元気で絶対に弱音を吐かない。


俺のそばにずっといればいいのに。


俺が守るのに。


プリ小説オーディオドラマ