第8話

俺の目ちゃんと見ろよ
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2021/03/26 08:45

担任「じゃあ、さようなら」


クラスが一気に騒がしくなった。


部活に急ぐ人、帰る人、みんな楽しそうだな。


奈生「今日帰り遊ぼー」


光平「おう!遊ぼうぜ!」


奈生と光平がこっちを見る。


優「え?」


奈生「遊ぼうよ、優も!」


光平「たまには皆で行こうぜ」


優「おう!行こーぜ!!」


3人で話していると、後ろから声がした。


周「横田さん」


優「なにー?」


私がスマホを見ながら適当に返事をすると、周は私の目の前に来た。


周「あのさ、聞いてほしいことある」


周は珍しく真面目な声だった。


奈生「優、今日は周の話聞いてあげてよ」


光平「また今度一緒に行こ」


奈生と光平は何かを察したかのように笑って手を振って愛衣と佳奈の近くに行った。


優「話聞けって、」


4人でばいばーいと手を振って楽しそうに教室を出ていってしまった。


周「ごめん、」


優「いいよ、謝んなくて」


周「屋上行こう」


周はそう言って私の前をスタスタ歩いていく。


何よ、いきなり。


今更謝ってくんのかな。


早く帰りたいな。




ガチャ



優「...」


周「...」


何も話さないまま、周はフェンスに腕を乗せて外を眺めてる。


私は周から少し離れて周を見ていた。


周「あの、さ」


周はようやく喋ってこっちを見た。


私は下を向く。


周「横田さんのこと好きなんだ」


優「は?」


私は周をチラッと見る。


周「初めて会った日好きになった。一目惚れした。」


周は恥ずかしそうに、でも真っ直ぐに話す。


私のこと虐めてたじゃん。


私が可愛くなったからって好きになって。


昔のことを無しになんて出来ない。


優「なんで好きとか言うの」


周「え?」


優「意味わかんない、自己中すぎだよ」


私は泣きそうになった。


昔の悔しさと、周の真っ直ぐで素直な気持ちで涙が出そうだった。


周「自己中ってなに」


周は少し怒った声。


優「うあ、」


周の大きな手が私の顔を包む。


周から目を見つめられる。


目を逸らしたくても逸らせないくらい真っ直ぐな目。


周「俺の目ちゃんと見ろよ」


周は悲しそうに強く言った。


優「私はあんたが大っ嫌い」


言っちゃった。


嫌いって。


嫌いだけど、嫌いじゃない。


昔の周は嫌い。だけど、今の周は嫌いじゃない。


否定したい。だけど、したくない。


私が受けて来たいじめを許すみたいで悔しい。


周「そっ、か、」


周は優しく手を離して下を向いた。


私は周の目を見る。


周は涙を流した。


そして笑った。


周「ごめんね」


それだけ言って屋上から出ていってしまった。


優「なによ、ごめんねって」


私は座り込んだ。


涙が溢れてきた。


悲しいのかも、悔しいのかも、よくわかんない。


なんで泣いているのかも分からないけど涙が止まらなかった。


優「なんで私なんかを好きになったの、」




ガチャ



ドアが開いて、不思議と顔を上げてしまった。


??「大丈夫?」

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