第66話

悪者
158
2021/08/28 13:23

萌花「それでねっ」


今日の放課後も萌花ちゃんは私達と一緒に帰っている。


あの日、4人の女子から言われたことが頭から離れない。


みんなに囲まれて笑っている萌花ちゃんは本当の萌花ちゃんなの?


本当に、私の事を友達だと思ってるの?


モヤモヤする。


もうヤダな。


気持ち悪い。


私が立ち止まったのを気づいた周は駆け寄ってきた。


周「優!どうしたの!?」


気持ち悪い。


吐きそう。


口をおさえてしゃがみこむ。


愛衣「優!!」


佳奈「優、」


公平「大丈夫か、」


亮「優」


奈生「優!大丈夫!?」


萌花ちゃん「優ちゃん!!」


みんなが私の名前を呼んでいる。


泣きそうで、気持ち悪くて、モヤモヤした気持ちも全部吐き出したい。


優「ご、め、」


今、気持ち悪いって泣き出せばきっとみんなが助けてくれる。


きっと萌花ちゃんなら泣いて助けてって言えるんだろうな。


私ってほんと可愛くない。


なんで言えないんだろう、なんで泣けないんだろう。


私は立ち上がって歩きだす。


フラフラする。


泣きそうで、心が痛い。


亮「優」


亮は私を背中に乗せて立ち上がった。


体がふわっとして浮いた。


亮は私をおんぶしてくれた。


私は亮の肩に顔を隠して、こっそり涙を流した。


ぐすぐす言っているから、多分亮にはバレている。


亮「濡らしていいから」


亮はそれだけ言った。


優「う、ん、」


亮「ごめん、先帰るわ」


周「待って、俺リュック持つ」


亮「まじ?」


周「俺も家行くよ」


萌花「待って!私も!」


みんなの話し声がだんだん聞こえなくなった。




__優の部屋__



萌花「わあ!優ちゃん!」


目を開けると、萌花ちゃんの顔が目の前にあった。


優「萌花、ちゃん」


なんで私の部屋に。


萌花ちゃんは私の部屋からバタバタ出て行って、すぐに亮と周が部屋に入ってきた。


亮「大丈夫?」


周「大丈夫かー?」


周は私の頭を撫でて優しく笑った。


優「うん、ありがと」


亮「お前すごい熱あった。」


亮は私のおでこに貼ってある冷えピタを交換しながら言った。


優「そんな?」


亮「39℃もあんのに我慢するなバカ」


優「ごめん」


亮「最近元気なかったよな、ずっと体調悪かったんじゃないの?」


優「っ、わかん、ない、や、」


私はなんだか悲しくなってきて涙がこぼれた。


周「優は我慢しすぎ!」


周は私の手を握って笑った。


萌花「泣かないでー!」


萌花ちゃんも私の頬を触って言った。


優「これは、熱のせい」


私は涙をふいて言う。


亮「お粥作ってくるから着替えといて」


亮は優しく笑って周と部屋を出た。





パジャマに着替え終わって、私がベットに戻るとソファに座った萌花ちゃんが私の方を見てきた。


萌花「ねーねー、優ちゃん優ちゃん」


優「ん?」


私はベットに座って萌花ちゃんの方を見る。


萌花「周くんと付き合ってるのー?」


萌花ちゃんはピンクベージュのネイルをした綺麗な爪を見つめながら聞いてきた。


優「え、な、んで?付き合ってないよ、」


萌花ちゃんは笑みを浮かべて私の手を握った。


萌花ちゃんの手は細くて小さい。


萌花「よかったあ!2人は友達だもんね?」


優「うん」


萌花「私が周くんと付き合ったっていいもんね?」


優「いいに決まってる、だって、」


だって友達だ。


もう、恋はしない。


萌花「ふふふ、じゃあ私の恋応援してくれる?」


萌花ちゃんは可愛く聞いてくる。


優「もちろん、応援、する」


萌花「約束ねっ」


優「うん、」


優「あのさ、、私に近づいたのは周のため?」


萌花ちゃんは嫌な笑みを浮かべた。


萌花「当たり前じゃん!!私優ちゃん嫌いなんだよね〜」


萌花「私より可愛くないくせに、みーんなにチヤホヤされて、」


萌花「いつも周りに男がいて、調子乗んなよ」


萌花ちゃんは笑って私の頭に手を乗せた。


優「...」


何も言葉は出なかった。


萌花「正直、邪魔なの、私が周くんを好きって知ってるくせに仲良くしすぎ」


萌花ちゃんは冷たい目で私を見る。


優「ごめん、萌花ちゃんの気持ち全然考えられてなかった」


萌花「いい子ぶらなくていいのに」


優「私、悪者になるよ」


優「周から嫌われるから、そしたら周は私の事を見なくなる」


優「そしたら、萌花ちゃんは周と幸せになって?」


私が悲しく笑うと、萌花ちゃんは不機嫌そうにした。


萌花「優ちゃんって優しすぎてムカつく、」


萌花ちゃんはそれだけ言って部屋から出て行った。



優「ぅぅぅ、」


心が痛くて、辛くて、おかしくなりそう。


こんなに泣いたのはいつぶりだろう。


もうやだな。


周から嫌われるってどうするの。


どうやって嫌われよう。



周と萌花ちゃんが付き合って、私は心から笑える自信が無い。


亮「優?」


周「優ー!」


萌花「優ちゃん〜」


萌花ちゃんは何事も無かったかのようにまた入ってきた。


私は布団の中に隠れる。


涙がずっと溢れてきて、痛い。


亮「2人とも、優辛そうだし、もう帰って大丈夫だよ」


周「ほんと?」


亮「うん、ありがとう」


萌花「じゃあ!周くん一緒に帰ろーっ」


周「じゃあね、優」





部屋から3人が出ていって、亮だけが部屋に来た。



亮「優」


優「うぅぅ、りょぉぉ」


私は亮に抱きつく。


亮は何も言わずに私の背中をさすってくれた。


亮の匂いと体温に落ち着いて、涙がだんだん止まる。


亮「大丈夫、大丈夫」


亮は何も聞かずに私を強く抱きしめ続けてくれた。

プリ小説オーディオドラマ