亮「はよ」
話しながら登校していたら、亮が後ろを向いた。
私もふと振り返ると、耳にイヤホンをした周が歩いてきていた。
周「..はよ」
周は私から目をそらすと、冷たく返事をして歩いて行った。
亮「なに、喧嘩したの?」
亮は周の背中を見つめながら私に聞く。
優「そんな感じ」
私は苦笑いをして亮を見る。
亮「そうか」
亮は何も聞いてこない。
無理に話さなくていいよって意味だと思う。
亮は優しいな。
萌花「しゅーくん!」
帰り道、萌花ちゃんは周の腕を掴んでくっついて歩いている。
周「なになに」
周も優しく笑っている。
あの日から周とは何も話していない。
私が謝ればいい話だ。
でも、私は嫌われたままでいい。
萌花ちゃんと周が幸せになれるなら、私は悪者になる。
萌花ちゃんの言う通り、私って邪魔な存在だったんだな。
2人の背中を見つめて寂しくなっていると、愛衣が私の名前を呼んだ。
愛衣「優!どうしたの、具合悪い?」
佳奈「優?」
優「あ、全然!元気だよ?」
私は2人に笑いかける。
愛衣「もー!無理しないでね?」
佳奈「熱出た日からずーっと元気ない」
心配かけちゃってるんだ。
優「ごめん、大丈夫だよ」
誤魔化すように笑って言う。
周side
優って俺の事嫌いだったんだな。
友達だと思ってた。
友達になれたと思ってた。
優と話したい。
でも優は俺と話す気無いだろうな。
萌花「周くん聞いてるー?」
隣にくっついて歩く白雪が首をかしげた。
周「わり、なに?」
萌花「もー!聞いててよね?」
白雪はほっぺをふくらませて言う。
優だったら、ちゃんと聞いとけバカって言うんだろうな。
いつもみたいに笑って。
後ろにいる優をチラッと見ると、優は堀さんと佐々木さんに心配されているみたいだった。
優元気ないもんな、心配になるよな。
元気無いのも、全部俺のせい。
友達に戻れなくなるくらいなら、好きって伝えればよかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。