第9話

嫉妬のちゅー_うらたぬき
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2021/05/06 13:56
『おーい!坂田ー!!教科書返せー!!』
もう下校しようと、昇降口にいた隣のクラスのさかたんに大声をかける。
私の彼氏、うらたくん経由で仲良くなった友達なんだけど、こりゃまぁ忘れ物が酷い。
そして何故かうらたくんじゃなく、私に借りに来るが押しに負けて貸してしまう私。

そんなさかたんは、遠くでもわかるくらい目を見開いた。
直後、私に負けないくらい大きな声を出した。
『ごめーん!!返すの忘れてたー!!』
そう言いながら、ちょこちょこと小走りしてくるさかたん。
相変わらず、小動物のようだ。
そんな彼の元へ、私も駆け寄る。
『はい、!ごめんっ!忘れてたっ、!!』

『もー、ほぼ毎回忘れてるじゃん!』

『次は忘れないでね!って毎回言ってるけど…できる?』

『うん!できる!多分!!』
曖昧な宣言を笑顔でするさかたんに、返された教科書で頭を軽く叩く。
鈍い音と鈍い声が聞こえたけど気にしない。
『んじゃ、ありがと、私待ち合わせしてるからまた明日!!』

『んー!ありがとー!!』
小走りしつつ、さかたんの方を振り返ってみる。
すると、彼は大袈裟に手をブンブン振ってくれていた。
私も彼に負けないくらい大きく振り返すと、遠目でもわかるくらいニコッと笑ってくれた。

さかたんの笑顔を確認して、私は目的地へと走った。























『ごめーん、!!うらたくん遅くなって、!!』

『…別に、』
中庭でスマホをいじって待っていた、私の彼氏うらたくん。
お互い部活が忙しく、最近一緒に帰れていなかった。
しかし今日はたまたま都合があったため、久しぶりに一緒帰ることになった。

ただ、私が来てもうらたくんはスマホから目を離そうとしない。
それに、さっきの返事も何だか冷たく感じた。
『う、うらたくん…か、かえr__________』
心配になって、うらたくんの顔を覗くと突然視界が真っ暗になった。
その原因に気付いたのは、うらたくんの手が自分の頬に添えられてからだった。
気付いた時には、うらたくんの顔が目と鼻の先にあり、吸い付くように口付けをされた。
何度も何度も角度を変え、求めるうらたくんに抵抗はできず、されるがままとなる私。
『んぅらっ、くっ、ん、っ、!』

『っは、ぁ、っ黙れっ、』


『んんんぅっぁ、』
少し距離が離れたと思ったのも束の間、黙れの一言だけ言われ、また口を塞がれた。
今彼がどう思っているのかも分からない。
ただ、私が遅かったから、怒っているのかと思ったけど、そうでもなさそう。
『っぷはぁっ、ちょ、どうしたの…?』

『坂田と話しすぎ…俺の彼女なのに…』
その一言にとても驚いた。
怒っている、というよりは嫉妬に近かった、いや何なら嫉妬そのものだ。
うらたくんは嫉妬なんてしない、と偏見を持っていたが故に、とても驚いてしまった。

そんな私の表情を読み取ったのか、すぐさま手の甲で口元を隠した。
『や、やっぱり忘れろ、今の無かったことにして…////』
なんて彼は言っているけど、忘れる気なんて微塵もない。
なんなら、録音しておけばよかったレベル。

今まで見れてこなかった、うらたくんのデレ。
常に塩対応で、付き合えた今でも塩なうらたくん。
そんな彼は実は嫉妬深いみたいです。










『嫉妬のちゅー_うらたぬき』

Fin__________

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