『天月くん、そう言えばなんだk』
『へえぇっ!?』
ソファで体育座りをしてスマホを見ていた天月くんに声をかけると、突然驚かれた。
何かしたかな…と言動を思い出すも、それらしき事はしていない。
彼に向けて小首を傾げても、ずっと驚いているだけ。
全く訳の分からない私は、天月くんに聞くことにした。
『ど、どうしたの…突然大声なんか出して…』
『えっ、あ、ご、ごめん…// ビックリしちゃって…//』
『ビックリ…?何にビックリ…?』
本人曰く吃驚したと言っているが、どういう訳かさっぱり分からない。
だが、今も尚驚いたような表情。
しかもおまけに、頬が赤く染っており、なんなら耳まで真っ赤だ。
この表情からするに、何かしらに照れていると推測するが、問題の原因が不明。
『ね、何にビックリしてるの?』
『えぇっ!?あぁ、いや、その…///』
『なぁに?勿体ぶらないでいいのに…』
『だっ、だって…恥ずかしいんだもん…///』
『恥ずかしい…ってなにが…』
聞いても聞いても、謎が深まるばかり。
それに、肝心の照れている原因を教えてくれない。
何をそんなに勿体ぶる必要があるのか。
しかし、私が話しかけて間もなく驚かれたのだから、会話は少ない。
どこに原因があるかは探しやすいが、情報が少なすぎる。
そんなしょぼい脳みそをフル回転まではしてないが、働かせて出した答え。
それを未だ顔を染めている彼に伝えてみた。
『もしかして…私が天月くんって呼んだせい…?』
『ぅあっ、!ねぇそれ…恥ずかしい…//』
『やっぱりそうなんだ…w』
そしてまた顔を赤らめ、今度はクッションに顔を埋める天月くん。
そもそも私たちが付き合ったのは、つい先月のことで。
まだまだお互いに初々しさが残っていた。
その中、ちょっと恋人っぽいことしない?と私が提案したところ、今回私の家に来てもらった。
初めは玄関に入ることさえ躊躇っていた彼。
今でこそこの空間に違和感は感じていないようだが、ソファの座り方は体育座りとこれまた変な座り方。
そしてそして、私は付き合う前から今までずっと、天月くんの苗字"天宮"くんと呼んでいた。
なのに急に彼のあだ名である"天月"くん呼びをしたから、赤面症の彼は驚いたのだろう。
『あなたちゃん…からかってるでしょ…//』
『別にからかってはないけど…ただ、可愛いなぁって思っただけであって、』
『だ、だからっ、!そういうとこだってば〜…///』
クッションをさっきより強く抱き締め、足を軽くバタバタする姿は子供のようだった。
もともと彼は顔立ちが幼い感じだったから尚更。
そんな姿を眺めていると、クッションから目だけ覗かせてこちらを見てきた。
私が不思議に思っていると、天月くんが口を開いた。
『な、なんでさ…俺の名前…呼んでくれたの…?』
『え、なんか…恋人っぽいじゃん?名前で呼び合うのって』
『それに、天月くん私の事名前で呼んでくれてるのに、私だけ苗字で呼ぶのは違うなって…』
『そ、そっか…// ありがと…』
『んふ、だって天月くんのこと、大好きだもん』
『ふっ、不意打ちっ、!駄目だって…!お、俺も好きだけど…///』
恋人っぽいから、という私の不純な動機にも納得してくれる優男さん。
そして大好きって言うと、露骨に顔を赤く染める照れ屋さん。
でも最後には、やっぱり自分からも好きと伝えてくれるスパダリさん。
それが私の彼氏、天月くん。
天月くん、って気兼ねなく呼んでいい存在になれたらいいな。
『君の名前_天月-あまつき-』
Fin__________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!