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第5話

女の子
15
2020/06/01 12:59
二人は仲良く、肩を並べて登校する。
高一では、同じクラスだったけれど高二になってから
別々のクラスになってしまった。
蒔原 勇海
蒔原 勇海
(はぁぁ……同じクラスならいいのに。
早くクラス替えしてぇなー……。)
「恋愛対象」として見られていない事は分かっている。
まず、夕蘭は正当な恋をしたいはずだ。
わかってるよ、そんなこと。
同じクラスになって、少しでも俺の気持ちに
気づかせたかった。
クラス替えを待ち望むが、まだ高二は始まったばかり。
しかも、クラス替えしたとしても同じクラスになれるとは限らない。
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
勇海……おい!
蒔原 勇海
蒔原 勇海
んっ……なんだ?
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
俺の話、聞いてたか!!
なんの返答もないし……
蒔原 勇海
蒔原 勇海
えっ……わるい……。
聞いてなかった。
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
なんでだよー!!最近勇海
ぼーっとしてる事多くない?
蒔原 勇海
蒔原 勇海
そうか……?
そんなつもりはないんだけどな……。
いやいや、ぼーっとしてる原因はお前のせいな!?
そう、心の中でツッコむ。


この気持ちに気がついてから、考え事をする事が
多くなった。
蒔原 勇海
蒔原 勇海
それで?なんの話?
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
高二になってクラスも変わったから
これを機に、モテ始めないかなって。
蒔原 勇海
蒔原 勇海
も、モテ……
それは困る。
非常に困る。
夕蘭がモテ始めたら、俺が入る隙間なんて一切
無くなってしまうじゃないか……!
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
俺、背もちっさいし顔も“どーがん”だし?
近所の人に「今日も可愛いね〜!」なんて
言われる次第だよ……??!!
俺はお、と、こだっ!!!
蒔原 勇海
蒔原 勇海
童顔って言うより、夕蘭は
可愛い系の顔つきなんだよな〜
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
勇海が言うと嫌味にしか聞こえねー!
お前俺の前ではこんな母さんみたいなのに
学校では爽やかイケメン決めやがって……
ぶつぶつと文句を言う夕蘭
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
勇海は無駄にモテすぎだ!
ずるいぞ!
蒔原 勇海
蒔原 勇海
いや……そんな事言われても……
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
少しくらい俺に分けてくれても
良くないかー!
夕蘭がプンスコしながら、歩いていると遠くから
声が聞こえる。
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
女の子の声……?
すると、正面からこちらに手を振りながら走ってくる
2人の女の子が。
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
だ、誰……?
勇海の知り合い?
蒔原 勇海
蒔原 勇海
いや……存じ上げないぞ……?
女の子たちが、二人の元までたどり着くと
満面の笑みを浮かべる。
そして言う。
「おっ……おはよう、麻生くんっ……!!」……と。
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
へっ……?あっ……お、おはよう……?
蒔原 勇海
蒔原 勇海
お前の知り合いじゃんか
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
はっ……!?いや俺知らないんだけど……
横井 杏南
横井 杏南
私、麻生くんと同じクラスの
横井 杏(よこい あん)って言います!
女の子は弾けるような笑顔で、夕蘭に笑いかける。
横井 杏南
横井 杏南
この子は渡田 璃湖(わた りこ)
私の親友です!
渡田 璃湖
渡田 璃湖
よろしく。……ほら、杏
二人とも困ってるから行くよ
天真爛漫な杏とは逆でクールめな璃湖。
璃湖は、はしゃぐ杏の腕を引く。
横井 杏南
横井 杏南
うん、わかった……!
じゃあ麻生くんまた後で……って
…ぷふっ…!動かないでね?…よいしょ!
すると突然杏は笑いだし、夕蘭の頭を触る。
蒔原 勇海
蒔原 勇海
!?!?
麻生 夕蘭
麻生 夕蘭
えっ……!?
横井 杏南
横井 杏南
寝癖、付いてたよ!
じゃあまた後でね!
にっ、と笑い手を振りながら二人は去っていった。
蒔原 勇海
蒔原 勇海
(寝癖……こんなことになるなら
俺の手で治してあげれば良かった……!!
つーかあの子ら何なんだよ……!!)
勇海の心はモヤモヤしていた。

ーあの女の子、絶対夕蘭を狙ってる。

そう思っていた。

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