二人は仲良く、肩を並べて登校する。
高一では、同じクラスだったけれど高二になってから
別々のクラスになってしまった。
「恋愛対象」として見られていない事は分かっている。
まず、夕蘭は正当な恋をしたいはずだ。
わかってるよ、そんなこと。
同じクラスになって、少しでも俺の気持ちに
気づかせたかった。
クラス替えを待ち望むが、まだ高二は始まったばかり。
しかも、クラス替えしたとしても同じクラスになれるとは限らない。
いやいや、ぼーっとしてる原因はお前のせいな!?
そう、心の中でツッコむ。
この気持ちに気がついてから、考え事をする事が
多くなった。
それは困る。
非常に困る。
夕蘭がモテ始めたら、俺が入る隙間なんて一切
無くなってしまうじゃないか……!
ぶつぶつと文句を言う夕蘭
夕蘭がプンスコしながら、歩いていると遠くから
声が聞こえる。
すると、正面からこちらに手を振りながら走ってくる
2人の女の子が。
女の子たちが、二人の元までたどり着くと
満面の笑みを浮かべる。
そして言う。
「おっ……おはよう、麻生くんっ……!!」……と。
女の子は弾けるような笑顔で、夕蘭に笑いかける。
天真爛漫な杏とは逆でクールめな璃湖。
璃湖は、はしゃぐ杏の腕を引く。
すると突然杏は笑いだし、夕蘭の頭を触る。
にっ、と笑い手を振りながら二人は去っていった。
勇海の心はモヤモヤしていた。
ーあの女の子、絶対夕蘭を狙ってる。
そう思っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!