顔を向けると
彼はちょうど階段から降りてきたところで
私と目が合った。
少し首を傾げて不思議そうに私を見る彼に
言葉が詰まる
先週は金曜日に会えるのを
楽しみにしていたはずなのに、
そんな事さえ頭から抜けていて
違う感情でここに来て
彼と会ってしまった自分が恥ずかしくて
目を背けていた。
今のその声は落胆して?
きっと彼は察している。
こないだと一緒だって
そう思っているに違いない。
次会う時は
笑顔の私で会える
そうなるはずだったのに、、、、、
気づいているんじゃないの、、、、?
彼の顔を見てまた目が合うと
目を細めて優しく微笑むその顔に、
そういうつもりでここに来たんじゃないのに
彼に着いて行っていいのか
思わず彼のいる所に
向けようとしたこの足を直した。
下から掬うように現れた手が私の手を優しく包んだ
一回り大きな手
手を引っ張られているわけではないのに
彼に着いていく自分。
また今日も彼に救われた。
部屋に入るなり
"すぐ片付けますね"って言って
玄関で少し待っていたら、
すぐに彼は戻ってきて
"どうぞ"と言われて
先週座った場所に腰を下ろす。
楽しく話せる気がしない
何かを聞かれて
素の私を知られるのが怖い。
そんな考えばかりが
頭の中でぐるぐる回っている。
なぜか
聞かれたくないのに私から聞いてしまった。
その言葉を聞いた途端
彼の何でも受け入れてくれる優しさに涙が出た。
上手く言葉も出ないで
ただ涙を流す私に
彼の大きな手が
小さい子をあやすように
私の頭を撫でる
その優しさで余計に涙が溢れる。
目を開けると
どうやら泣き疲れて寝てしまったようで
ベッドの上にいた。
ベッドまで運んでくれたんだ、、、、
身体を起こすと
目線を下げたすぐ先には
ベッドにもたれかかって寝ている
彼の後頭部が見える。
思っていた心の声が
彼を眺めているとポツリと声に出た。
彼の先に見える置き時計が見えると
時間は6時半
一度家に帰るならそろそろ出ないといけない。
家に帰ったらちゃんと出社できるだろうか
会社から家に戻る事はあるのだろうか
考えたくもない不安が押し寄せる
寝ていたと思ってた彼の身体がゆっくりと動く。
聞かれてしまった。
聞かれたくなかったけど
振り向く彼の微笑みを見て安心している自分がいる。
きっと誰かに聞いてほしかったんだろう、、
今日もやらないといけない事がたくさんある。
仕事の事を考えると気持ち悪くなってくる。
それでも行かないといけない
これは義務だ。
会社に行ったら
帰ってくる時の私は
今の思考の私ではいられない
そんな予感しかしない。
彼の前だと泣いてばかりだ
昨日たくさん泣いたはずなのに
また涙で頬が濡れる
ゆっくり立ち上がると
片手にはスケッチブックが持たれて
私の隣りに腰をかけると
スケッチブックが開かれた。
スケッチブックには
先週描いていた
マグカップの絵に
涙を流して眠っている私が描かれていた。
......fin
新社会人の方もいるだろうと思って書いたのに
時間がかかってしまいました(=ω=;)
辛い事があったら
全てをそこの会社に
捧げなくてもいいんですよってね。
本当に。
思い悩んで心の病気になるぐらいなら
辞めても逃げではないのです。
リクエストでハオちゃんをいただいて
このテーマでいいのか?って思いながらも
書いてしまいました(´ . .̫ . `)
ハオペンさん多いのでね、許して?←
リクエストあればそちらを優先に、
なければ次回からは考えてたお話に合いそうな
メンバーでお話を書きたいと思います( *´꒳`*)੭
なのでメンバーのお話数にばらつきが出始めるかと;
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。