「ふわぁ……」
私は、まだ開ききらない目を擦りながら、駅までの道を歩いていた。
………ねむい。
昨日、菅原先輩に家まで送ってもらって。
私が家に入ってすぐに、先輩からLINEが来た。
「今日はバレー部の見学してくれてありがとう!
もしも暇だったらまた見に来てね!
待ってる」
つい頬がゆるんでしまって。
「きゃーっ」なんて言いながらベッドの上でバタバタと足を動かす。
今の顔は絶対に家族に見られちゃだめだな。
絶対そうだ。
きっと、にやけ切ってしまってる。
先輩からのLINEの、最後の1文。
「待ってる」
それがどうにも嬉しくて。
昨日は眠れなかったのだ。
「ねむい………」
寝ぼけながら足を動かしていると、
もう駅が見えてくる。
そのまま電車に乗り込むと、私は出入口に1番近い座席へ座る。
そのまま目を瞑って電車のガタン、ガタン……といリズムに耳を傾けて………。
ゆっくりと、意識を手放した。
「…………ちゃん、……………そらちゃん」
「…………ん、」
誰かの声が聞こえて、ゆっくりと目を開ける。
目の前に、人影。
その輪郭がゆっくりとはっきりしていって…。
「す、がわらせんぱい……?」
「ん、おはよ」
そこには、にっこりと優しく笑う菅原先輩が立っていた。
「よく寝てたね」
先輩がにこにこしながらいう。
!?
寝顔、見られた?
「電車乗ったらあなたちゃん寝てるし、びっくりしたよ」
同じ電車だったんだね、なんて先輩が言う。
そっか、やっぱり先輩は気づいてなかったのかぁ、
実は、私は先輩の名前は知らなかったけれど、先輩の姿は何度か見た事があった。
部活動紹介のとき。
澤村先輩と一緒に壇上に立って、新入生に演説をするとき。
廊下ですれ違うとき。
同じ電車に乗っているとき。
「わたしは」
わたしは、と口の中でもう一度呟く。
なんだか少し寂しくて、拗ねたような口調になってしまう。
なんて子供なんだろう…
「ん?」
先輩が首をかしげる。
かわいいな、そんな失礼なことを思ってしまう。
「私は、しってましたよ。
先輩が同じ電車乗ってるの………」
「…………そっかぁ」
にっこり、先輩がわらう。
太陽みたいな笑顔。
あぁ、暖かい人だなぁ。
そのまま、私たちは一緒に学校へ登校した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。