夏休みも終わりに近づいてきた頃、翔太様は言った。
と。
親権喪失のことは知っていた。以前、あの家を出ていくためには、縁を切るにはどうしたらいいか調べていたときがあったから。でも、親権喪失したって、何にもならないとわかった。児童施設だって行きたくないし、他の人の養子になる気もない。だから、しようとも思わなかった。
蒼井翔太said
あなたちゃんの夏休みも終わりに近づいてきた頃、僕はあなたちゃんに言ってみた。
とね。
聞くのは、もう遅い。だって、弁護士も付けたし、家庭裁判所に申し込みもしたから。
でも、聞いておかないとね。
と、あなたちゃんは小さな声で言った。急に暗くなったので、聞くのはヤバかったかと思った。
と、そのとき
と、急に笑顔になった。あなたちゃんの笑顔は、誕生日のときに見た笑顔以来だった。
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作者です。
今回は短くてすみません。
ではでは。m(_ _)m
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!