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第22話

そばにいてほしい
街の郊外にとある一家が住む家があった。

広大な土地に、白壁の屋敷。
庭は手入れが行き届き、季節の花が咲き乱れている。

そこにはまだ年若い主人と美しい奥方、そして大層愛らしい子供が仲睦まじく暮らしていた。
???
ねえ、お母さん!髪を結って!
???
はいはい……此方へいらっしゃい、甘えん坊さん
???
もう直ぐお兄ちゃんになってしまうんだから、今のうちにたっぷり甘えておけばいいさ!
???
楽しみだなあ……ボク、妹がいいな!
???
弟も良いぞ?一緒にサッカーも出来るし!
???
それも良いなあ……やっぱり両方欲しいよ!
???
じゃあママが男女の双子を産めば解決だな!
???
貴方、難しいことを言わないで!
笑いの絶えない、誰もが羨む【絵に描いた様な幸せ家族】だった。

しかしその偶像家族に、突然の終焉が訪れる。


*****
???
お父さん……お母さん……?
???
はやく、にげて……わたし、の……だいじな、ぼうや……
???
お母さん!!!!?
母親は最期の瞬間まで我が子の身を案じ、こと切れる。

血の海と化した部屋の中で、少年はただただ茫然と立ち尽くしていた。


つい先程まで普段通りの生活をし、笑い合い、幸せを謳歌していた少年の家族。
それが今は脈打つことなく床に転がる躯と化している。

そしてその傍らには、この惨劇の原因たる存在が立っていた。

それは人に在らず、人を喰らうもの――【悪魔】だ。
悪魔
何だ、まだ居るじゃないか……子供ガキは殺り甲斐がない、が喰えば旨い
???
……っ!
悪魔は寸分の迷いもなく、子供の喉元目掛け喰らい付いた。
*****


どんな因果か運命か。
【悪魔】によって何もかもを奪われた子供は【悪魔】によってその命を救われる。

しかしその代償は途方もなく大きく、そして最悪の出会いを招いていた。
子供を救ったのは、眩しい白銀の髪と真紅の瞳を持った悪魔だった。
白銀の悪魔
白銀の悪魔
何故お前は私を恐れない
???
死ぬことも、悪魔だって怖くない……だってボクにはもう【憎しみ】しか残っていないから
白銀の悪魔
白銀の悪魔
その憎しみとやらで、お前は何をする
???
【復讐】だ!
子供は強い眼差しで白銀の悪魔を見つめた。
???
悪魔、ボクに力を貸してください
白銀の悪魔
白銀の悪魔
……私にお前の仇の悪魔を殺せと?
【同胞殺し】は重罪なのだが
???
違う、悪魔アイツを殺すのはボクの役目だ
白銀の悪魔
白銀の悪魔
では、私にどうしろと?
???
悪魔アイツを殺す方法を教えて欲しい。それと、ボクが目的を果たすその日まで……
子供の頬に一筋の涙が伝う。
???
そばにいてほしい
白銀の悪魔はその様子を静かに眺め、そして答える。
白銀の悪魔
白銀の悪魔
良いだろう、私と【契約】を行え
???
けいやく?
白銀の悪魔
白銀の悪魔
悪魔は名を交わし、【対価】を得ることで【絶対服従】の契約を結ぶ
???
わかった……でも今のボクは何も持っていないよ
白銀の悪魔
白銀の悪魔
あるではないか……ソレ・・
白銀の悪魔は子供を指さし、こう言った。
白銀の悪魔
白銀の悪魔
【前金】としてその復讐に燃える瞳を、【成功報酬】としてお前のその赤々とした魂を私に寄越すと良い
???
…………わかった
白銀の悪魔
白銀の悪魔
では、名を名乗れ
ロルフ
ロルフ
ボク……いやの名前はロルフ、ロルフ・コネリーだ!
白銀の悪魔
白銀の悪魔
我が名はルシファー、闇を統べる悪魔の王だ