街の郊外にとある一家が住む家があった。
広大な土地に、白壁の屋敷。
庭は手入れが行き届き、季節の花が咲き乱れている。
そこにはまだ年若い主人と美しい奥方、そして大層愛らしい子供が仲睦まじく暮らしていた。
笑いの絶えない、誰もが羨む【絵に描いた様な幸せ家族】だった。
しかしその偶像家族に、突然の終焉が訪れる。
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母親は最期の瞬間まで我が子の身を案じ、こと切れる。
血の海と化した部屋の中で、少年はただただ茫然と立ち尽くしていた。
つい先程まで普段通りの生活をし、笑い合い、幸せを謳歌していた少年の家族。
それが今は脈打つことなく床に転がる躯と化している。
そしてその傍らには、この惨劇の原因たる存在が立っていた。
それは人に在らず、人を喰らうもの――【悪魔】だ。
悪魔は寸分の迷いもなく、子供の喉元目掛け喰らい付いた。
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どんな因果か運命か。
【悪魔】によって何もかもを奪われた子供は【悪魔】によってその命を救われる。
しかしその代償は途方もなく大きく、そして最悪の出会いを招いていた。
子供を救ったのは、眩しい白銀の髪と真紅の瞳を持った悪魔だった。
子供は強い眼差しで白銀の悪魔を見つめた。
子供の頬に一筋の涙が伝う。
白銀の悪魔はその様子を静かに眺め、そして答える。
白銀の悪魔は子供を指さし、こう言った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。