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第1話

プロローグ
悪魔アザゼル。

かつては天界で輝きし天使の一人。
【神の如き強者】という名の通り圧倒的な力を持ち、神より【下界の監視】という命を受けていた。
そんな彼が神を裏切り、堕天した理由は諸説ある。


*****


とある教会の奥。
そこには埃とカビの臭いが染み付いた書物庫がある。
滅多に人も寄り付かないそんな部屋だが、好んでそこに居座る変わり者も稀に居た。

最近の主たる変わり者は、まだ幼い少女と若い青年。
女の子
先生、どうしてアザゼルは悪い天使になったの?
青年
青年
色々あるけど、その中に『人間の女と交わり、神の知識を与えてしまったから』というものがあるよ
女の子
まじわる?
青年
青年
つまり、人間の女性に恋して結ばれてしまったんだ。そして人間に神様の世界の知識を教えてしまった
女の子
それはいけない事なの?
青年
青年
神様の世界の事は、人間が知ってはいけない秘密の事。医術とか錬金術とか……それらを教えるという事は、神様への大きな裏切りなんだ。だからアザゼルは【裏切者】として堕天されたんだよ。
女の子
アザゼル可哀想ね……恋をする事は【罪】なの?知識を教えたのも、好きな人を喜ばせたいからなんじゃないの?
青年
青年
さて、どうだろうね
女の子
神父様たちはいつも『愛は尊いものだ』といっているけど、神様はどうしてアザゼルの【恋】を【罪】にしたの?
青年
青年
うーん……神様は彼の【恋】を【劣情】と判断したんだろうね
女の子
れ……?何それ??
青年
青年
流石のキミでも難しいか……【劣情】とは、本能であり欲望。己を律し理性と無償の愛を良しとする神様の世界では、良識を覆す【種別を超えた交わり】は禁忌中の禁忌なんだよ
女の子
先生のいってる事、もっとわからなくなった
青年は困り顔で微笑む。
青年
青年
これ以上わかり易く説明するのは難しいなぁ……
女の子
大人になったらわかるかな?
青年
青年
いつかわかる時が来るんじゃないかな?
女の子
じゃあ、頑張って早く大きくなるね
青年
青年
慌てなくても良いんだよ、キミはゆっくりゆっくり大人になって行けば良いんだ
女の子
えー
青年
青年
そしてアザゼルみたいな悪魔に魅入られない様に、賢く清廉な大人の女性になりなさい
女の子
わかった
『イマイチ納得いかない』
そんな表情で古めかしい本を閉じる少女。
それを見た青年は、少女の頭を優しく撫でた。
青年
青年
さぁ、読書と喋りの時間はおしまい!おやつの時間までみんなと遊んでおいで
女の子
はーい
少女はにっこり微笑むと、青年に背を向け外へと駆け出して行った。