第3話

お姫サマは、牢屋にて。
16,482
2020/02/15 15:09
あなた

んぅ…

細く差し込んできた光で目が覚めた。
うっすらと目を開け、呆然とする。
あなた

ここは…?

起き上がり、手足が重いことに気がついた。
手枷足枷、ついでに首輪。
なんだこれは。まるで…奴隷じゃないか。
やんちゃとはいえ、誇り高き姫がこんな目にあってたまるものか。
そう思って、抵抗してみるものの、ちっとも現状が変わる気配がない。

周りも見てみる。
ここは牢屋だ。目の前には、鉄格子がズン
と立ちはだかり、唯一の窓は細く月明かりを部屋に入れている…月明かり?
あなた

嘘だろう…まさか、
もう夜だとでも言うのか?

ふふっ、そのまさかだよ
唖然呆然としている私を見て笑う。
暗すぎて、顔がよく見えない。
あなた

誰だ?ここはどこだ?私は、
どういう経緯でここにいる?

質問が多いね。
ひとつずつ答えていこうか
カツ、カツ、と靴を鳴らしてソイツは歩いてきた。ちょうど、光が差し込むところに。
ななもり。
ななもり。
俺はななもり。
苺の国こと、苺公国の第一王子
あなた

!?

王子が、直々にだと…!?
私は慌てて佇まいを直して礼をした。
勿論、口調は「高貴で謙虚な姫」に戻して。
あなた

大変失礼致しました。
ご機嫌麗しゅう、ななもり王子。
私、華の国の第一王女…あなたに
ございますゆえ。

ななもり。
ななもり。
ははっw
かしこまった挨拶はいらないよ
えーと次の質問は?と聞く。
ポカンと口を開いたままということにも気がつかず、私は彼を見つめた。

苺の国の王子といえば有名だ。
優しい一番目、ななもり。
とても賢い二番目、さとみ。
多様な才能を持つ三番目、ジェル。
破天荒な四番目、ころん。
戦略家の五番目、るぅと。
国民に特に人気な末っ子、莉犬。

でもそんなことを気にしていても仕方ない。
今は、現状をどうにかするのが先だ。
あなた

ここは、どこですか?

ななもり。
ななもり。
ここは苺公国の城の中の…
拷問部屋と呼ばれるところ
あなた

拷問部屋…!!

怖気がする。
確かに周りを見ると、縄であったり、ナイフだったりが所々に置かれている。
…私は、拷問されるのか??
ななもり。
ななもり。
安心してw
それはしないからさ
心を見透かしたかのように笑う。
私には悪魔の笑みにしか見えなかったが。
あなた

ラスト…私は何故、ここに
いるのでしょうか??

ななもり。
ななもり。
簡単な話だよ。
…俺たちが攫ってきたんだ
ニィッと歯を見せて笑った。
犬歯だろうか…?少しだけ牙のようになっているのが見えた。
そしてその様子はとても色っぽかった。
ななもり。
ななもり。
もちろん帰してあげる。
でもさ、その前に…
あなた

…なんでしょう?

ななもり。
ななもり。
…食べさせてよ
ちろりと舌なめずりをした。
月明かりに目がキラリと光り、なぜだか私はその場で動けなくなってしまった。
物理的にではない。見とれてしまったのだ。
本当にその光景は、美しかった。

もっとも、そんなことを呑気に考えられたのもその時までだったけれど。

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