細く差し込んできた光で目が覚めた。
うっすらと目を開け、呆然とする。
起き上がり、手足が重いことに気がついた。
手枷足枷、ついでに首輪。
なんだこれは。まるで…奴隷じゃないか。
やんちゃとはいえ、誇り高き姫がこんな目にあってたまるものか。
そう思って、抵抗してみるものの、ちっとも現状が変わる気配がない。
周りも見てみる。
ここは牢屋だ。目の前には、鉄格子がズン
と立ちはだかり、唯一の窓は細く月明かりを部屋に入れている…月明かり?
唖然呆然としている私を見て笑う。
暗すぎて、顔がよく見えない。
カツ、カツ、と靴を鳴らしてソイツは歩いてきた。ちょうど、光が差し込むところに。
王子が、直々にだと…!?
私は慌てて佇まいを直して礼をした。
勿論、口調は「高貴で謙虚な姫」に戻して。
えーと次の質問は?と聞く。
ポカンと口を開いたままということにも気がつかず、私は彼を見つめた。
苺の国の王子といえば有名だ。
優しい一番目、ななもり。
とても賢い二番目、さとみ。
多様な才能を持つ三番目、ジェル。
破天荒な四番目、ころん。
戦略家の五番目、るぅと。
国民に特に人気な末っ子、莉犬。
でもそんなことを気にしていても仕方ない。
今は、現状をどうにかするのが先だ。
怖気がする。
確かに周りを見ると、縄であったり、ナイフだったりが所々に置かれている。
…私は、拷問されるのか??
心を見透かしたかのように笑う。
私には悪魔の笑みにしか見えなかったが。
ニィッと歯を見せて笑った。
犬歯だろうか…?少しだけ牙のようになっているのが見えた。
そしてその様子はとても色っぽかった。
ちろりと舌なめずりをした。
月明かりに目がキラリと光り、なぜだか私はその場で動けなくなってしまった。
物理的にではない。見とれてしまったのだ。
本当にその光景は、美しかった。
もっとも、そんなことを呑気に考えられたのもその時までだったけれど。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。