ポカポカと暖かい日差し。
私は街に出るための動きやすいドレスに着替え、一人で目を輝かせていた。
動きやすい服装とブーツは、元の国から持ってきた物だ。キラキラしたアクセサリーも全部全部外している。
豪奢でない馬車に乗って城下町に向かうと、そこは人で溢れかえっていた。
ふわっと香るのはパン屋さんのパンの焼ける匂いや、花屋さんの綺麗な花の匂い。花を見つめていたら、「買うか?」とジェルくんに聞かれてしまった。
しっかり四角に切られた石が敷き詰められ、家や店も綺麗に整っている。馬車がガラガラと通っていっても、農家のおじさまが荷車を押していっても、崩れる様子がない。
華の国も綺麗な方だったが、城下町は少し物が脆かったりした。
頭をコツコツと人差し指で叩く。
パチッとウィンクして、悪戯っぽく笑った。
腕を組んで、うーんと考え込む。
その後も色々見て回りながら話をした。
一番人気は末っ子の莉犬くんといえど、やはり王子たちは老若男女に人気らしい。誰もが笑顔で挨拶をしてくる。
やはりその姿勢が素晴らしいというものだ…
大満足の一日だった。やはり苺の国はいい国だ…
私の顔を覗き込む。
緑色の綺麗な目が私のことをじっと見据えた。
色々考えたことや感じたことをひと通り話したあと、にこっと笑いかけて付け加えた。
少し驚いたように目を大きくさせたが、嬉しそうに笑った。
ハッとした。
もしかして城下町探索はもっとあとの予定だったんじゃないだろうか。
恐る恐るジェルくんを見やると、肩をすくめてとぼけられしまった。
ジェルくんの喋り方を真似ておどける。
あははっと快活に笑う横顔は人懐っこさが滲み出ていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。