第5話

親切なお詫び
1,294
2018/08/14 06:39


これを友達に言ったらどうなるんだろう。
絶対食いつかれるだろうな...



なんてったって男子校と女子校なのだ。



そりゃ最高の出会いの場であるのだから...



大人びて合コンだのなんだのこの歳に
なったら色々するだろう。



あの学校はイケてる男子のイメージが強い。
大貴
名前、なんて言うの?
あなた
え?あ、あなた、です
大貴
あなたちゃんね!よしっ覚えた!



すると翔ちゃんの所に駆け寄って
何かお願いをしている。
ちょっとだけだからねっ!
大貴
おぅっ!さんきゅ!



するとその、ありおかくんっていう人は
私の腕を引っ張って
大貴
あなたちゃん、ちょっと来て!



急に名前を呼ばれるし、そんな強引な
やり方があるだろうか。



彼のペースに飲まれたままだ。
あなた
え?ちょっ・・・待ってよ!どこ行くの?


翔ちゃんが気になって後ろを気にしてるんだけど
大貴
大丈夫!お姉ちゃんちょっと
借りるって言ってきたから


いやっ、全然大丈夫じゃないんだけど!!

そのまま突き進む彼にもう半分は諦めている。



すると、途中で立ち止まったその人。
そこには自販機があって、
あなた
へぇ、ここに自販機あったんだ!


入り口にある自販機とは売ってる
飲み物が全く違くて
大貴
裏口に近いからスタッフはみんなここで
買ってんだよね〜


そう言いながら硬貨を数枚入れた。





┈┈┈┈ピッ、ガタンっ。




ボタンを1回押したと思ったら...



┈┈┈┈ピッ、ガタンっ。ピッ、ガタンっ。



あとは同じボタンを3回も押した。
あなた
え?
大貴
ほらっ!


1つは自分の手に、もう2つを私の手に持たせる。
大貴
さっきのお詫び!翔くんと
一緒に飲んでよ


全然気になんてしないのに...わざわざジュースを
奢ってお詫びをするなんて...。




しかも弟の分まで買ってくれるなんて、
ずいぶん、律儀だな、と。



キンキンに冷えているその缶ジュースに目を落とせば、男子がいかにも飲みそうなラムネ味の炭酸飲料。
あなた
ありがとうっ!でも...ごめん、
私炭酸飲めない


普通だったらそんな事、大人気ないから
絶対言わないけど、
大貴
えっ!まじで?


なんかこの人なら気を使わなくても
大丈夫な気がした。
大貴
うわーっ!...まじかぁ、それすげぇ
美味しいのになぁ


手をおでこに当ててものすごく分かりやすい
オーバーリアクションをとる。



彼の困った顔に思わず笑ってしまった。
大貴
・・・えっ、なんか笑う要素あった?
あなた
うんっ、すごい良い人だなーって


すると彼はキョトン顔で頭を傾けた。
大貴
えっ...そうかな?


自覚がないって、かなり罪深いけど。



今どき、そこまで潔白な人間がいるなんて
信じ難い。

プリ小説オーディオドラマ