今からでもって·····どういう意味で
言ったのだろうか。
山田くんの気持ちにちゃんと答えを
出せなかった自分が、今更無責任に
彼を受け入れるなんて
もしも本当に山田くんを好きになって
いたとしても、そんな身勝手な事なんて
できなかったはずだ。
本当に分からなくて衰弱してる彼に
容赦なく聞いてしまう。
ほんと、許してくれ···その一言に尽きる。
今からでも、本当に遅くないのだろうか。
有岡くんの出した答えにやっぱり
山田くんとちゃんと向き合おう...
そう思えたけど...
有岡くんを無理に喋らせてしまったのだろう。
電話をかけ始めた頃に比べて、
ものすごく咳が酷くなっていた。
呼吸もしんどそうなのに、喋ろうと
頑張ってるのが電話越しに伝わってきて
喉痛いだろうから一度で聞き取って
あげよう、と変な気が回ってしまう。
耳を澄ませて彼の言葉を待っていると
幸いにもちゃんと聞き取れたのはいいけど、
明日は有岡くんのバイトがない日。
そして翔ちゃんのお迎えもない····
最後の方は声が戻ってきたのか
元の声になりつつあって
いや、風邪を移される心配なんて
これっぽちもしていないのだが。
なのに君は言うことを聞かない。
彼のちょっと抜けてるところは
こういう時に愛おしさを感じさせるのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!