ほんとに、ほんとに、計算なんじゃないかって
疑いたくなっちゃうくらい。
どういう育ち方したらあんなに紳士な
高校生になるんだか...
ちょっと全部を知り尽くしたくなるくらいだ
フロアに行くと大きいソファに
ちょこんと座っていた翔ちゃん。
大きく手を振って私を呼んでいる。
お利口な弟に自分がきちんと姉を出来ている
のか自信がなくてとても泣きたい気分である。
翔ちゃんがフロアから指をさしたのは、
ガラス張りで中が綺麗に見える室内プール。
私と違ってとても賢い弟だ。
そろそろ本当に自信がなくなってくる。
ガラス越しにプールの中を見れば、いるのは
スイミングスクールの先生とここの責任者の人だけ。
今日は利用者、少ないんだなぁとか
思いながら翔ちゃんに目を配れば
懸命に自分のスイミングバッグを漁る弟がいた
しょぼんと分かりやすく凹む弟。
きっと明日、学校の授業でもプール入るだろうし...
散々、弟を待たせといて探しに行かせるのは
流石に可哀想だなと思い、
自販機でこの前、有岡くんが奢ってくれたのと全く同じラムネのジュースを買ってあげてソファで飲んでるように伝えた。
急いで更衣室の方に足を早めた。
男子更衣室の入り口の前に立ち止まり
ドアにかかっている札を見る。
使ってる人が居なくなると決まって
その札は" 清掃中 " に文字を変える。
子どもの声も聞こえないし、大丈夫だろう...
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。