第12話

弟の忘れ物
1,117
2018/08/14 14:37


ほんとに、ほんとに、計算なんじゃないかって
疑いたくなっちゃうくらい。



どういう育ち方したらあんなに紳士な
高校生になるんだか...



ちょっと全部を知り尽くしたくなるくらいだ
おねぇちゃーんっ!


フロアに行くと大きいソファに
ちょこんと座っていた翔ちゃん。



大きく手を振って私を呼んでいる。



お利口な弟に自分がきちんと姉を出来ている
のか自信がなくてとても泣きたい気分である。
あなた
ごめんね翔ちゃん!
ありおかと喋ってるの見えてた!
あなた
え!?


翔ちゃんがフロアから指をさしたのは、
ガラス張りで中が綺麗に見える室内プール。
あなた
あっ・・・分かってたんだ


私と違ってとても賢い弟だ。



そろそろ本当に自信がなくなってくる。



ガラス越しにプールの中を見れば、いるのは
スイミングスクールの先生とここの責任者の人だけ。



今日は利用者、少ないんだなぁとか
思いながら翔ちゃんに目を配れば
・・・ないっ!!


懸命に自分のスイミングバッグを漁る弟がいた
あなた
え、何がないの?
ゴーグル・・・っない


しょぼんと分かりやすく凹む弟。
きっと明日、学校の授業でもプール入るだろうし...
あなた
更衣室かな?


散々、弟を待たせといて探しに行かせるのは
流石に可哀想だなと思い、



自販機でこの前、有岡くんが奢ってくれたのと全く同じラムネのジュースを買ってあげてソファで飲んでるように伝えた。
あなた
お姉ちゃん探してくるから
ここで飲んでな?
はーいっ


急いで更衣室の方に足を早めた。



男子更衣室の入り口の前に立ち止まり
ドアにかかっている札を見る。



使ってる人が居なくなると決まって
その札は" 清掃中 " に文字を変える。



子どもの声も聞こえないし、大丈夫だろう...

プリ小説オーディオドラマ