第44話

最初で最後のキス
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2018/08/20 07:08


こんな事、あんまりだと思う。



だけど気を使って余計彼の気持ちを
踏みにじるより、悲しませるより、
私は遥かにいいと思ったのだ。




うん、大丈夫だ。




きっと····いや、絶対に?




認めてもらうとか、納得してもらうとか、
そういう理解なんて必要ない。



ただ私は彼に知ってもらいたかっただけなのだ。




知ったからどうこうはないけれど、
ただただ、今の私のことをちゃんと
自分から伝えてちゃんと知ってて貰いたい。





そう思っただけなのだ。

涼介
お願いだから、それ以上言うな


そう言われたけど、大人しくそれに
従うほど私はお利口ではない。




それに従ったからといって、
何も優しさは生まれないし。




彼の傷は癒えることも古傷になることもない。



だから私は背く。



自分にも厳しくいきたいのだ。

あなた
私が好きなのは····


私がそう言いかけると、背を向けていた
彼は一瞬にしてこちらに体を戻した。

涼介
おいっ···言うなってッ
あなた
私が、好きなのは····っ
涼介
おいっ、言うなっつってんだろッ
その口塞ぐぞッ


強ばった彼の表情、山田くん、ごめん。




私は心に決めて言葉にしたのだ。




本心じゃないのに伝えることに
ひたすら想いを込めて...

あなた
わたし····有岡くんが好きっ
涼介
····っ、マジ最悪だわッ···


チラチラ視点を変えては
落ち着きのない山田くん。



分かり切っていた事を、いざ本人の口から聞くと、
人ってどうしようもなく動揺するのかもしれない。




私は、そんな彼を見たかったわけじゃない。



そんな彼を望んでいたわけじゃない。




だけど今の私には...
山田くんを幸せにはできない····っ。




前に進んでほしい····そんな事、
偉そうに思っちゃうんだ。

涼介
·····なぁ
あなた
ん?


再び近づいてくる彼に思考は
停止してしまう。

涼介
もう二度としねぇから···逃げんなよ
あなた
え?····どういう·····っ


理由を聞く前に、確かに距離を
縮めてくる山田くん。




山田くんの唇に、枯れた想いは全てのっかる。




...それが自分の唇と離れたのは




今日が最初で最後だろう。



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