第33話

5コールのルール
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2018/08/17 17:08


家に帰ってくると布団の上に正座して、
スマホとにらめっこをする。




スマホには有岡くんの表示画面。



このボタンをタッチすれば、
簡単に通話が出来てしまう...



便利なものは時に便利すぎて
人を困らせる。

あなた
ああ、どうしよッ····寝てるかな


体調が心配なのもあるし、今の自分を
彼に聞いてもらいたいのもあるし...



でも彼は風邪で休んでいる。




このタイミングで電話をかけるのは、
迷惑かもしれない。




明日にした方がいいかもしれない...





そう思うけど、やっぱり今がいいと
思う私はかなり自分勝手だ。

あなた
よし5コールで駄目だったら
切ろうっ、うん


そう自分に言い聞かせて電話を
かけることを強制づける。




ボタンを押したいのになかなか
押せないビビりな私の親指。




私は深く呼吸をして自分を落ち着かせた。

あなた
大丈夫大丈夫大丈夫っ、
有岡くん優しいもんっ


考えてたらいつまで経っても電話を
かけられないと思って、



一旦、無になってその画面に指を触れた。




LI〇E独特の音が流れる。




あぁ、掛けちゃったよ




履歴に残ってしまうから後戻りは
もう出来ない。




画面を目で見つめてコールの数を数える。

あなた
いち·····にぃッ·····


コール数が増えていくと分かりやすく
胸がズキズキし始める。




体調が悪いって知ってても、やっぱり
出てくれないと寂しいのかもしれない。




人間って恋をするとすごく脆いのだ。

あなた
さん····よんッ····


自分で決めたルールに今更文句を
付けたくなってしまった。




5コールで出るなんて手元に
スマホないと無理じゃんか。




馬鹿だ、私は馬鹿だ。




自分勝手なくせして、人に振り回されると
良くも悪くも体調が狂う。




·····今日は諦めよう。



別に今じゃなくてもいい。






明日掛け直すことも出来るし、
なんなら明後日プールで会えるし...




そう自分を納得させて通話ボタンを
切ろうとした時だった。

あなた
····ふぇっ?


急に通話の文字...


それと同時にどんどん
増えていく通話時間。




一瞬、事の状況が読めなかったのだが、
私は慌ててスマホを耳に当てた。

あなた
も、····もしもし?


サラッと掛けたらこんなに
緊張なんてしないのに。

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