第26話

事実じゃない話
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2018/08/16 20:43


翔ちゃんのクロールを見て、
先にフロアへと戻ってきた。




翔ちゃん、まだかなぁって、更衣室から
出てくる人を毎回、目で確認していたのだが...

あなた
あ、.....有岡くん.....


何か荷物でも取りに来たのか、ジャージ姿の
彼は自然とこっちの方へやってくる。




これ、何か話し掛けた方がいいよね?



本当は話し掛けたくない。



有岡くんから話し掛けられるのを待ってたい...



だけど、このままスルーされるのは
もっと心に傷がつく。

あなた
あ、あのっ有岡くんっ


私の呼び掛けにピタッと動きを止めた彼。




少し目が泳いでるっていうか...

大貴
.....よっ


いつもと素振りは変わらないのに...



醸しでた空気はとてつもなく違和感を持っている。




何を話しかけたらいいのだろう...





まさか昨日のLI〇Eのことを自分から言うなんて、
ちょっと重すぎて気が引ける。





一生懸命、話題を、探していると
彼から話し掛けてくれたのだ。

大貴
.....あの、さ


何を言われるんだろうって自分にとって
嫌なことだったらどうしようって。




彼の言葉が聞きたい気持ちに対して
矛盾が生まれる。

大貴
迷惑?
あなた
・・・えっ?


その言葉に一瞬ヒヤッとしたのだ。




迷惑.....有岡くんにとって私はそんな
存在だったのかなって.....




でも私はちゃんと聞いていた。




イントネーション的に、今のは疑問形だったのだ。





...ってことは私に質問してきたと。

大貴
俺、邪魔かなっ.....って


チラチラ足元や周りに目を落とすのに、
やっぱり私の事を気にしているようで

あなた
待って!全然話が読めない...
どういう事?


有岡くんに説明を求めれば、
それはとてもごたついていた。

大貴
あの後さ、山田に、会ったんだよね


昨日の事といい、今日の事といい、




このタイミングで山田くんの名前が
出てくるのはなんか嫌な予感がしていたのだ。

大貴
.....付き合ってたって
あなた
えっ?


なんで事実はそうじゃないのに...なんで?

大貴
俺に気使ってくれた?
あなた
使ってないよっ・・・ほんとに、
ほんとに違うって!!


必死で否定したけど、彼は力なく笑って...
どこか悲しそうだった。

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