さっき彼に聞かれたから自分の名前は
伝えたけど、私は彼の名前を知らない。
分かる情報は、ありおかくんってだけだ。
すっかり忘れてたのか彼は私の目を見て
そう言った。
へぇ、下の名前、だいきって言うんだ...
頭の中でそう思っていたら
彼は自分からそんな事を言ってきたのだ。
思わず吹いてしまう
すると有岡くんはつられたように目尻を細くした
笑いながら、そう言う有岡くんは本当に
心が広い人なんだと思った。
これから何回会うかは分かんないけど、
まぁ、ジャージ返さなきゃだから必ず
もう一回は会うことが条件付けられている。
今度こそ彼に別れを告げれば
彼は片手を軽くあげると缶ジュースを飲みながら
スタッフ入り口に入っていった。
時が過ぎていくのに自分は止まったまま、
状況をなかなか掴みきれない。
なんだろう、最後の言葉。
彼はサラッと暗くなる前に帰れよって...
ただそう言っただけなのに。
送ってもらったりするよりも、有岡くんの
言葉の方が優しさを直に感じた。
本当にいい人だなぁって。
たった数時間なのに、翔ちゃんを迎えに
来ただけなのに...
思わぬ所で思わぬ出会いが転がっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。