確実にこちらへと歩み寄ってくる有岡くんに、
山田くんは嫌な顔をする。
そうだ、両思いは認めないって
この前言われたんだっけ...
有岡くんが誰を想っているかは別として、
一緒にいるとそれを嫌がられるのはもう見て分かる。
その言葉に余計に胸がズキズキ痛む。
周りがちゃんと見えてないと、客観視
できないと...こうなっちゃうんだろう。
眉間にシワを寄せている山田くん。
私が何を言うのかいつもは推測できて
いるのに、それが全く出来てないから、
少し余裕のない感じだった。
それは地元が同じ私達なら、場所を明確に
言われなくても誰でもすぐに分かる公園。
小馬鹿にするように笑われるのも無理はない。
かなり自己中心的な態度だ。
ごめん、を言いかけたけど、
言う手前でやめた。
そう鋭く指摘してくる山田くんは
やっぱり少しも隙がない。
強気に答えれば、彼の眉は
少しだけピクリと動いた。
あまり表情で訴えかけない彼なのに...
見るからに苦しそうな表情をして
見せた時は、少し私の中でもぐらついた。
もうそこまで来ていた有岡くんを
チラッと見て彼はそう言った。
...なのにさぁ、
明らかに昨日と変わらぬ潰れた声で
そう山田くんに答えた有岡くん。
どういう事なのか私も疑問を持つ。
わざとらしく痛そうな顔をした
有岡くんは本当に頭が上がらない。
昨日の放課後に会いたいと
言ってくれたのは有岡くんの方で...
わざわざ会いに来たのに。
ガラガラ声で飛んでもない事を言ってきた。
するとそれに対して吹き出すように
笑い始めた山田くん。
···山田くんがちゃんと笑ってるとこ
見るなんて、いつぶりだろう。
なんかオッケーサインをしているけど、
全然オッケーじゃない。
なんか、分かってきた···
山田くんと話さなきゃいけない。
だけど、それを理由にこんな所になんか
絶対来れなかったはずだ。
山田くんにバッと腕を強引に
掴まれて余計に混乱してしまう。
有岡くんは大きな手を片方私に
向けてずっと手を振っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!