第40話

頭の回転が早い彼
1,044
2018/08/19 14:47


確実にこちらへと歩み寄ってくる有岡くんに、
山田くんは嫌な顔をする。




そうだ、両思いは認めないって
この前言われたんだっけ...




有岡くんが誰を想っているかは別として、
一緒にいるとそれを嫌がられるのはもう見て分かる。

あなた
ねぇ、···山田くん
涼介
言われなくても、もう帰る


その言葉に余計に胸がズキズキ痛む。




周りがちゃんと見えてないと、客観視
できないと...こうなっちゃうんだろう。

あなた
そうじゃなくてさっ···


眉間にシワを寄せている山田くん。




私が何を言うのかいつもは推測できて
いるのに、それが全く出来てないから、
少し余裕のない感じだった。

あなた
今日の夜さ、公園きて
涼介
は?


それは地元が同じ私達なら、場所を明確に
言われなくても誰でもすぐに分かる公園。


あなた
···ちゃんと話したい
涼介
随分、今更だな


小馬鹿にするように笑われるのも無理はない。



かなり自己中心的な態度だ。

あなた
うん·····それは本当に···ッ


ごめん、を言いかけたけど、
言う手前でやめた。

涼介
謝らないんだ


そう鋭く指摘してくる山田くんは
やっぱり少しも隙がない。


あなた
謝っても、解決しないんでしょ?
···無理ならもう謝らないよ


強気に答えれば、彼の眉は
少しだけピクリと動いた。

涼介
ほんと、勝手なやつだな···


あまり表情で訴えかけない彼なのに...



見るからに苦しそうな表情をして
見せた時は、少し私の中でもぐらついた。

涼介
けど優先順位は低いんだよな、俺


もうそこまで来ていた有岡くんを
チラッと見て彼はそう言った。




...なのにさぁ、

大貴
優先順位?ゴホッゴホッ...
そんなのねぇよ"


明らかに昨日と変わらぬ潰れた声で
そう山田くんに答えた有岡くん。




どういう事なのか私も疑問を持つ。


大貴
俺ッ、このあ"と病院だもん"
···ゴホッゴホッ


わざとらしく痛そうな顔をした
有岡くんは本当に頭が上がらない。

涼介
は?
あなた
え、ちょ····そうなの?


昨日の放課後に会いたいと
言ってくれたのは有岡くんの方で...
わざわざ会いに来たのに。

大貴
俺は会い"たい"って言っただけで···
ゴホッゴホッ···一緒に帰るとは
言ってないよ···ゴホッ


ガラガラ声で飛んでもない事を言ってきた。





するとそれに対して吹き出すように
笑い始めた山田くん。




···山田くんがちゃんと笑ってるとこ
見るなんて、いつぶりだろう。
涼介
それは想定外だわ、意外と頭回んだな
大貴
だろ"ッ?


なんかオッケーサインをしているけど、
全然オッケーじゃない。



なんか、分かってきた···




山田くんと話さなきゃいけない。



だけど、それを理由にこんな所になんか
絶対来れなかったはずだ。
あなた
えっ、山田くん?


山田くんにバッと腕を強引に
掴まれて余計に混乱してしまう。
涼介
ほら行くぞ公園
あなた
えっちょちょちょっ!!


有岡くんは大きな手を片方私に
向けてずっと手を振っていた。

プリ小説オーディオドラマ