第45話

爽やかボーイ
1,103
2018/08/20 14:07


ひとつの事が頭の中を永遠ループする事は
ごく普通に有り得るこどだ。




そんな時は、どんな冷静になろうと心に
言い聞かせても、大抵は思い通りにならない。




····じゃあ、それが2つの場合はどうだろうか。




答えは至ってシンプルだ。
あなた
·····はぁっ


悩みの大きさはただ単に大きく膨らみ、
解決の種は全く花を咲かせない。




こんなに一人で思い込んでいるのは私だけ...
そう思いたいところではあるが、





山田くんは、今どう思っているのだろうか。





有岡くんは、何を考えているのだろうか。





2つの事が混ざり合うように絡み合い、
それがほどけずに苦しくなる。





自分がどう行動を移せば正解なのか、
人生の解答用紙が欲しいくらいだ。






市民プールへと辿り着いたはいいけど...




見慣れた、来慣れたこの場所に、
何故か久しぶりな感覚を覚える。





そんな日にちは経ってないはずなのだが、
人が何かを感じ取る早さは時々矛盾を生む。





今日、この時間を、ここに来る事に何か
いつもの様な緊張感がないのは何故なのか...





彼に会うことに最初のような楽しさを、
また感じ始めているのだ。





いつもに増してフロアに漏れて聞こえて
くるのは子どもたちの騒ぎ声。





そんな無邪気な声の中に、大人の声が
混じっているのは言うまでもないだろう。





ガラス越しに見る彼は、
もうマスクを付けていない。





ジャージ姿が誰よりも似合っている、
めちゃくちゃ子どもに大人気の
爽やかボーイであった。
あなた
·····はぁ、なんだろ


思わずついてしまった今のため息は、
決して身が重くなるものではない。




彼はやっぱり彼のまんまなのだ。





ホースを片手に持った有岡くん。





それから逃げる子どもたちは背中に
かかった水が冷たかったのか、
甲高い声で騒ぎはじめた。





それを見ながらクシャッと笑った
その顔に今まで何度落ちたことだろう。





直接会うのもそれでいいが、遠くから
ずっと見ていても飽きないような、
そんな人柄の持ち主だ。





しばらく彼の様子を伺っていると···
やっぱり気配というか、視線を
感じ取ってしまうみたいで...

大貴
おっ!!


私に気づいた彼は口元を緩めては、また
クシャッと笑って手を振ってくれたのだ。

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