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第1話

最大の言い訳
1,678
2018/08/15 15:24


梅雨はいつの間にか終わっていて、
一息つく暇もなく夏はやってきた。



家の窓際についた風鈴は一向に鳴らない。



そよ風のひとつも吹かないほど、
猛暑日なのである。
あなた
あっつ...


家でクーラーをガンガンにかけて
ソファにだらしない格好で横になる。




アイスを豪快に口の中に入れると、
何とも言えない幸福感。




蝉が永遠と泣き続ける昼間というのは
もう、ほんとに



学生にとって貴重な休日も、自然と色んなものに
邪魔されてくつろぎたくてもできやしない。
あなた
なんでこんな暑いの〜?


項垂れているとお母さんに分かりやすく
ため息をつかれた。
母親
あんたねぇ、休みの日くらいどっか出掛けたらどうなの?バイトも何もしないでいつまでダラダラしてんのっ!
あなた
えー?だって面倒臭いんだもん


ソファで寝返りを打つと、お母さんはもう、呆れ顔。
母親
はぁ...そんなんだからいつになっても
彼氏ができないのよ!


最終的にはそれを言われて傷つく始末。
あなた
いや、違うから!私が彼氏できないのは女子校が理由だからっ!
母親
はいはい、分かった分かった。
あんたの友達みんな彼氏いるけどね?
あなた
うッ...なぜそれを


防御をしたつもりが、真正面から
攻撃を受けてしまった。




そう、私の周りはみんな彼氏持ち...
いったいどこで知り合うんだか




少しはその出会いとやらを私にも
分けて欲しいくらいだ。
母親
そんなにダラダラ暇してるんだったら
翔ちゃん迎えに行ってきて!
あなた
え〜ッ!?
母親
え〜じゃないっ!さっさと行きなさい!


母親ほど直接的に怖いものはない。


この歳になってもまだ思う。





翔ちゃんというのは私と10個ほど
歳の離れた可愛い弟のこと。



翔ちゃんは習い事で水泳をしていて、
その市民プールに迎えに行ってこいと、
たった今、お母さんにパシられたのだ。
あなた
まぁ、翔ちゃん可愛いからいいけど


外に出る服装に着替えて、財布とスマホだけ
手に持ち、私はチャイルドシート付きの
ママチャリに腰を掛けた。
あなた
これも弟のためッ


暑い中、重いペダルをただひたすら漕ぎながら、
少し家から離れた市民プールへと距離を縮める。

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