蛍 side
午後になり、体育の授業を受けるために移動している時ふと、泣きたくなった。
いつもなら、僕の隣で楽しそうに笑っている彼女が今日はいない。
午前中も彼女はいなかったはずなのに、そんなことを考え出してから寂しさばかりが募る。
泣いていることがバレないように、僕は急いで教室に戻って制服に着替え、彼女の家に向かった。
彼女と付き合い始めてから、こんなにも彼女が愛おしいと感じたことはない。
どんな時だって隣にいて、僕を支えてくれたから気が付かなかった。
僕は彼女のことを言い表せないくらい愛している。
再び溢れ出した涙を拭うことなく流し続けていると、彼女が優しく拭ってくれた。
僕のことをぎゅっと抱きしめて、頭を撫でながらありがとう、と言われて僕は声を上げて泣いた。
自分の情けなさ、不甲斐なさに腹が立った。
だけど、彼女が僕を抱きしめてくれただけで、一気に気持ちが落ち着く。
ほら、こうやってまた僕を喜ばせる。
彼女に叶うことは一生ないんだろうな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。