目を覚ますと、蛍が心配そうな顔をして私を見ていた。
屋上に行って、言い争いをしたところまでは覚えてるんだけど、そのあとの記憶がない。
彼女は嘘をついている。
何年も一緒にいるからこそ、彼女の嘘は簡単に見抜ける。
彼女が、僕の嘘を簡単に見抜けるのと同じように。
彼女は、昔から嘘をつくと鼻を触る癖がある。
今も鼻を触っているから、嘘だってバレバレだね。
急に西谷さんと菅原さんが来てびっくりしたけど、彼女が少し笑ったから良しとするか。
まぁ、嘘ついたのを許すわけじゃないけど。
普段滅多に泣かない彼女が、珍しく涙を流していて、ちょっと戸惑う。
そう言って抱きしめてあげると、ぎゅっと抱き締め返してくれた。
それから、彼女が泣き止むのを待って、僕たちは教室に戻った。
さぁ、あの2人組をどう処分しようかな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!